講義レポート

食卓を共にするということ

おうちパーティー学・ おいしい盛り付け学 キュレーターコラム 有山百恵

小規模なチームから大企業に至るまで直面する課題は違えど、複数人の共同作業で目標を達成するために重要なのが組織マネジメントだ。世の中には様々な理論やフレームワークが存在するが、個人的にはGoogle流の 「効果的なチームとは何か」にも示されている「心理的安全性を高める」ことが重要だと思っている。

「食卓を共にすること」は、ひとりひとりの能力や行動を把握でき、結果、その関係において、最大限のパフォーマンスを発揮できるのではないか。

例えば、パーティーを開くとき、皆に声かけして一品持ち寄りしてもらえば、そこから新しいコミュニケーションは生まれる。

お呼ばれした時に自分のオススメもしくは自分のセンスに引っかからないものを持っていくことはおそらくないだろう。お互いの好きなものは何か、どんなバックグラウンドやスタイルなのか、自分では考えも及ばなかった気遣いなど、相手を知るツールでもあり、そこから会話も広がっていく。つまり「食」は、見えなかった「人」の一面を見せてくれるのだ。

おうちパーティーというと豪華な料理やコーディネートの華やかさに目が向きがちだ。さらに「おうち(自宅)」というとハードルが高くもみえる。しかし、リラックスできる場所であればどこでもよいし、すべて完璧にこなすのがすべてではない。普段以上の自分を飾る必要もないのだ。小さなこだわりや一点の美的感覚が心を動かすことだってある。

集まる人が「誰」で、どんな「場所」に迎え入れ「何を」するのか。参加するゲストと主催するホストが一緒に「価値観」や「スタイル」を共有しながら、時間と空間を組み立てることがパーティーでは重要なのだ。

家族や友人だけでなく、職場や社会の中でも “ 自分の思考と異なるものを拒絶せず、自分の個性が尊重され、活かされていると感じる “ ような食卓をつくることは、実はものすごく贅沢で、ものすごく素敵な時間なのではないだろうか。

【影響を受けた本】

コクトーの食卓(レーモン・オリヴェ著・ジャン・コクトー画)

パリにある三つ星レストラン「Le GrandVefour(ルグランヴェフール)」のオーナーである料理人のレーモン・オリヴェが、常連客であった芸術家のジャン・コクトーに思いを馳せながら綴る料理書。動画や画像付きのレシピが当たり前になった現在、調理法が文章のみで紡がれている。料理上手でなくとも、繊細で丁寧な調理過程や薫りを想像しながら楽しめる一冊。料理は妄想です、笑。

TEXT : キュレーター    有山百恵

担当講義 :おうちパーティー学

おいしい盛り付け学



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