講義レポート

ぼくらがカフェにいく理由

小さなカフェをつくる 教授コラム 渡部和泉

 

 

日本にいわゆる「カフェブーム」が起きた、1990年後半。誰かの家に招かれたようなおしゃれなインテリアと、ラフなカフェ飯に夢中になり、雑誌を片手にカフェ巡りをしていました。「どんなすてきな人が、どんな想いからこんなお店をつくったの?」という素朴な疑問から、カフェライターになったのは15年ほど前。その間、日本のカフェのレベルはググッとあがり、さまざまなタイプの店が出てきました。
今も私のカフェ熱は冷めることなく、カフェで過ごす時間が幸せです。

特に惹かれるのは、個人が経営するこぢんまりとした雰囲気の店。
カフェライターとしてお話しを伺うのも、プライベートで寛ぎに行くのも、こういうお店だと気持ちがあがります(もちろん大手のコーヒーチェーンは、味が安定しているし、気兼ねなく寛げるし、流行のメニューも知れるし、別のよさがありますよね)。
個人カフェは、インテリアやメニューはもちろん、音楽、なにげなく置かれた本、1本のスプーンからも、オーナーの気持ちや体温が伝わってくるように感じます。
カフェを目指すようになったきっかけ、思わぬアクシデントや挫折、来てくれる人への想い、このスプーンを選んだ理由。ひとつとして、同じカフェストーリーはありません。
お話しを伺いながら、共感したり、笑ったり、泣けてきたり、ジーンとしたり。帰り道はいつも心がポカポカして、私もがんばろうって思えるのです。

個人カフェオーナーは、決して楽な仕事ではありません。
だけど、自由に表現できる充実感や、手作りのフードをおいしいと言ってくれる笑顔、たくさんの新しい出会い。
カフェをつくったからこそ得られるやりがいや幸せは、一度体験すると他には替えられないようです。
「この店は、自分が自分でいられる場所」、「カフェをつくったことで、自分のことを好きになれた」。そんな声も、よく聞きます。
もてなす側のポジティブでハッピーなオーラこそが、訪れる人を幸せにするのでしょう。

さあ、今日も心を満たすために、カフェへ行こう。

text :  教授  渡部和泉

担当講義:  小さなカフェをつくる



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