講義レポート

PORTLAND ain’t Utopia

松井明洋(MAT.)

メディアサーフという名の船を、皆で漕ぎ出して早丸11年が経った。全ての事象を「編集」という視点で切り取って行くこと、をモットーとする僕らは常に旅をすることからその「いろは」を学んできたと言えるかもしれない。会社が立ち上がってすぐの頃から、年に一度行われるカンパニートリップ(またの名を研修旅行)はたった一回をのぞいて毎年ポートランドだった。(ちなみに、その一回は数年前にスウェーデンのウメオという町に苔庭を作りに行った。あまりの過酷さにポートランドに戻そうと思ったのは僕だけないはず)

会社がTRUE PORTLANDというガイドブックを出版した、という背景をもってして、また、人より少しだけポートランドへ行った回数が多いかも、という点を根拠に、僭越ながら僕は一言言いたい。

ポートランドは決してユートピアでない、ということ。

これは、パリに住みたいと言っている女の子が実際に移住するとその理想とのギャップからパリシンドロームにかかるのよろしく、この街には、DIYカルチャーもビールもコーヒーもレストランもタトゥーもストリップもドーナツもエースホテルも、確かにみんなある。ウィアードだし、ユニーク。自由だし。自然と都市のバランスも確かに良い。そして都市が稀有な成長を遂げた、ということもあるかもしれない。でもホームレスのことや、ジェントリフィケーションのことなんかのダウンサイドもある。理想だけが上がりすぎるのは良くない。これは恋愛と同じですね。

言葉を変えて言わせていただくと、一つの都市が誰にとってもユートピアになるということはない、ということ。街というものは良い点とそうでない点を常に同時に有する。その前提で考えると、かの金子先生がおっしゃったように、「みんなちがって、みんないい」的な視点で他の都市とも比べて、多様な視点をもって、自分にとってのユートピアを探すことの方がポートランド礼賛するよりも重要なのでは、と思ったりするわけです。

自分にとってのユートピアが世界中のどこかにあるのでは、という姿勢でその探求を止めないために。また、その自分の好きな都市探すための物差しの精度をあげるために、旅をし続けること。比較し続けること。そのための一都市として、そのユニークさからポートランドは絶対に外せない、と思う次第です。

なので、結局のところ、今行こうか迷っている人がいるのなら、かのブルース先生の言葉を借りて、こう言います。「Don’t think, feel」と。

(担当講義:CREATIVE CAMP in ポートランド

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「CREATIVE CAMP in ポートランド」の説明会を随時実施します

8/22(水)19:30-20:30(最終)

場所:自由大学 教室
※遠方の方はオンラインで対応可能ですので、お問い合わせください。

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