講義レポート

小さなコミューンが生み出す新しい価値の形

「コミューン経済学」キュレーターコラム

昨年の秋に、縁あって飛騨高山に旅に出た。地元に住まれている方の手引きもあって、とても素敵な体験をさせていただいた。例えば宿。板倉という古民家を移築して一棟貸しされている宿だった。オーナーご夫妻は還暦を超えてから第二の人生として不動産会社を生業とし、この宿を母屋の横で運営されている。スタートして2年足らずだが、海外からのお客様も多い。「この歳になってFacebookとか始めてみたの。今では、フランスのお客様とやりとりなんてしたりしているんですよ。」おかみさんがはにかんだ。

小ぶりな古民家にかわいらしい調度品。どこを撮っても「フォトジェニック」な空間は確かに泊まる価値は高い。でもそれでは表現しきれない魅力がある気がしていた。この宿は高山駅からローカル線に乗り換えた最寄り駅から徒歩20分。周りは田んぼと住宅。移動には車が必須だし、食事する場所も近くにない。旅行者にとってはお世辞にも便利とは言えない場所かもしれない。その代わりに、朝食前に野菜の直売所にて仕入れたプチトマトの安さと甘さに感動し、予定をやりくりして私達を車で送り向かいしてくれるオーナーご夫妻の暖かさを感じることができた。

旅を通して、私達は単なるサービスの需要者である「お客様」としてお伺いするだけではなく、なんだか飛騨をベースにした生活者の『コミューン』に体験入学させていただいた気分。もしかして、コミューンは何かの目的のために組成されるものではなくて、そこにメンバーとしているだけで自分の居場所や心地良さを提供してくれる存在なのかもしれない。



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