講義レポート

創り出すひとと、後ろで支えるひと

「地域とつながる仕事」2期3回目 講義レポート

第3回は、創り出すひとと、後ろで支えるひと、それぞれの役割について考えました。率先的に自ら価値を創り出そうとしているゲストスピーカーとして、自然栽培(無肥料無農薬)のお茶づくりをされている伊川健一さんと、カンボジアのサンボー・プレイ・クック遺跡群とその地域をつなぐ場をつくっている吉川舞さんにお話いただきました。

私の主観も入りますが、講義でのお話をもとにゲストをご紹介しますと…

伊川健一さん
奈良県の大和高原で1200年前と同じ方法で、自然に逆らわず寄り添った無肥料無農薬のお茶づくりをしている。農家の家系ではなかったので、農地も農業の知識も何もないなかった状態から17年かけて、今や12ヘクタール、30箇所に上る農地のお茶を管理されている。現在は奈良だけではなく、岐阜や島根でも地元の方々と一緒に事業を進められています。
そもそも、経済発展の弊害として自然界の生態系が崩れてしまったことやそこから生じる貧困について問題意識を持っており、それを取り戻すためには、自然栽培の農業に取り組むことが必要だと19歳の時に悟ったそう。今では、「茶×〇〇」といった約10種類の事業において、人が働き・暮らし、きちんとお金が回わる仕組みを構築されている。

吉川舞さん
カンボジアで最も有名なアンコール遺跡群よりも、さらに昔の時代のサンボー・プレイ・クック遺跡群で、地域と遺跡と訪れる人をつなぐ、地元の暮らしを大切にした新しい観光のモデルを構築するべく事業を展開されている。小さい頃から昆虫や恐竜が大好き、いつか世界遺産で仕事がしたいと夢を抱いていた。たまたま大学の教授の研究について行ったカンボジアで出会った遺跡たちに一目惚れ。遺跡について研究の補助をする傍ら、サンボー・プレイ・クック周辺で生きる人たちのたくましい生き様にどんどん惚れ込み、大学卒業と同時にカンボジアに移住。現在は自分の会社を起業して経営されている。

そんな面白い生き方をしているお二人ですが、自身のことを自分が前に出てどんどん新しいことを進めていく「フォワードタイプ」と定義されていました。お二人ともが自分たちの事業に参画したいと心の底から想ってくれる人を求めているとのこと。特に自分たちとは対照的な「ディフェンスタイプ」の人と出会いたいとのこと。それはフォワードタイプを後ろで柔軟に支えていける人のことだと思うのですが、これってどんな人なのか?受講生のみなさんも関心を持っているようでした。ここについてもっと聞いてみたいし、みんなで語り合ってみたいなと思いました。

深さの共通項
お二人の共通点として感じたことは、無になって考える瞬間を何度も作って、深みのある自分を創ってきているということです。昔から、自分の「好き」や「大切にしている価値観」のままに直感で進んできただけでなく、その本質は何なのかを問い続けていらっしゃると思いました。お二人のように、まっすぐにやりたいと思うことを人生をかけてやっている姿を見ると、どこか羨ましく思ったり、私は何をやりたいんだろうと考えたりします。でも、私の考えて悩んでいるというレベルは、その深さがお二人とは比にならないように感じます。その力強い歩みの根底にある深さの理由を探ってみたいと思いました。


最後に…
何より私の心にぐさっと刺さったのは、「”どこで”ではなく、”自分がどんな価値を出せるか、そして最大化できるか”を考えることが大切」という言葉です。就職活動をしながら、将来の自分の選択について悩んでいた最近ですが、無意識的に「どこで」という表面上ばかりを見てしまっていたのかなと、そんな気がしました。もちろん”どこで”も大切な観点だと思うけれど、”自分が出したい価値”とは何か、自分自身に問いかけて、本質的な部分をもっと深堀していきたいと思いました。とは言っても簡単なことではないので、受講生の皆さんと一緒に深める機会もつくりたいと思います。

テキスト・写真:井上奈緒子(大学生インターン )



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