講義レポート

帆船のススメ

「みんなの航海術」講義レポート

こんにちは、『みんなの航海術』キュレーターの小林です。
先日、第1期が終了し、早速、受講生の方から講義レポートが届きました。
航海に出るまでにどんな心配があったのか、当日のフィールドワークはどんな様子だったのか。
これを読めば、あなたもきっと自分だけの航海に出てみたいと思うに違いありません。
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〜帆船への憧憬〜

ある日、表参道の自由大学前を通りかかり、ふと帆船が写った小さな写真に目が留まりました。「みんなの航海術」と書かれた掲示板。今まで、いくつかの船に乗ったことがあるものの「帆船」に乗った経験はありませんでした。「帆船」というと、太古の人々が高度な航海術を携えて世界中の海を巡る偉大な船。そんな憧れにも似たイメージを思い浮かべつつ、この講義への参加を決めました。

 

〜海図に集う仲間達〜

私自身、自由大学への参加は初めてであり、どのようなスタイルで講義が始まるのか不安を持ちつつ表参道へ。初めての顔合わせで、この講義への思いについて、一人一人話します。教授の田中氏より、海の地図こと海図の説明を受けながら、航海の目的地や航海中にやりたいことを決めていきました。ゼロベースから航海を作り上げる講義スタイルは、まさに未知への航海が既に始まっているようにも感じられます。

 

〜時雨れる沼津〜

当初の出航日は予報通りの雨。出港地、沼津の空には陰鬱な雲が広がり、見えるはずの富士山は全く見えません。天候悪化のため、乗船は翌日へ繰り越しとなりました。とはいえ、自然を相手にするからこそ、予定通りに物事は進まないものです。折角なので、空いた時間に沼津市内を散策。懐かしさが感じられる商店街の中、所々でお洒落なブティックに出会います。沼津港まで足を進めると、魚介を扱う専門店が立ち並び、活気に溢れていました。夕刻の沼津港は、明日の好天を予報するかのように紅い夕日が港のデッキを照らし、次第に航海への期待が増してきます。

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〜航海の始まり〜

翌朝は昨日の天気が嘘だったかのような快晴。沼津港からは、雪化粧した富士山が頭を覗かせています。航海の仲間達が集まり、いよいよ帆船「Ami」は出航です。出航後、クルーの皆さんに教わりながら、マストの帆を揚げていきます。「ツー、シックス、ヒーブ!」掛け声をあげながら、帆に繋がるロープを皆で引っ張ります。帆船の操舵も初めての体験です。操舵輪を回すと、ゆっくりと船体が針路を変えます。車のハンドルとは異なり、ゆっくりと舵が切れる様子は何か大きな生き物に乗っているかのような不思議な気分になりました。

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〜潮風とコーヒー、時々富士山〜

お昼には、目的地の大瀬崎に到着。沼津港から見える景色とは一変し、森に囲まれた離島のような雰囲気が感じられます。半島内の神社や池を散策し、丸い石がゴロゴロと転がる海岸でお弁当を広げました。駿河湾を眺めながら、お弁当がことさら美味しく感じられるのは、車ではなく帆船で海を渡って来たという満足感からでしょうか。

あっという間に出航の時間を迎え、針路は沼津港へ。穏やかな深緑色の海原を、Vの字に切る船首の波が美しく見えます。船上イベントの後、皆でコーヒータイム。潮風の匂いと混ざった、コーヒーの良い香り。時々、富士山を眺めながらゆったりとした時間を過ごしました。

 

〜航海の終わり〜

無事、沼津港へ入港し今日の航海について話し合いました。皆、満足そうな笑顔です。良い仲間達に出会えたこと、そして海の上で良い時間を過ごせたこと。帰路の新幹線の中でも回想にふけりました。

帆船による航海は天候や風向きに左右されるため、計画通りに予定を進めることは難しいかもしれません。ですが、そんな不確かなことを楽しむ気持ちは、普段の日常生活と比べると新鮮に感じられるものです。そして、この講義で得られたもの。それは、世界で一つの航海を仲間達と作り上げられた達成感かもしれません。これは、移動手段としての船ではなく、チームワークが必要な帆船だからこそ生まれたような気がします。

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皆さんも是非、これから出会う仲間達と帆船に乗って、未知なる航海へ出発してみてはいかがでしょうか?

(text:第1期 松下隼士)



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