講義レポート

表現と日常とアイスランド

DIYミュージック 第9期 講義レポート

「海外での体験がきっかけで、音楽が身近になりました」ー DIYミュージックの受講生から時々聞かれる言葉です。

確かに、畑の傍で仕事終わりに奏でられるギターやストリートミュージシャン、いろんな年代の人々が分け隔てなく集まる音楽フェスティバルなど、音楽が日常に溶け込んでいるワンシーンに出会うことが、海外では多い印象があります。

第9期卒業生の杉浦さんも、そんな体験が受講のきっかけになった1人。

ビョークやシガーロス、70歳で宅録デビューし59枚のアルバムを残した伝説のおばあちゃんミュージシャン「Grandma Lo-Fi」ことシグリドゥル・ニールスドッティルなど、個性的なアーティストを数多く産んでいるアイスランドでの体験についてレポートを届けてくれました。
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ついこのあいだまで「音楽を作るのは才能のある特別な人」「アーティストはステージの下から見上げるもの」だと思っていました。

小さい頃は音楽はただ楽しいもので、うたったり踊ったりすることも普通のことだったけれど、小学校に上がって音楽の授業がはじまると、人前で歌ったり演奏して間違うのは恥ずかしいこと、と思うようになっていき、10代になる頃には、もう音楽との距離はだいぶ遠くなっていた気がします。

その感覚が変わるきっかけになったのは、転職までの空白期間にたまたま立ち寄ったアイスランドでの体験でした。

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アイスランドでの滞在中に話した人たちは、年齢性別関係なく「映画撮ってる」「バンドやってるよ」「小説を書いてる」となにかしら活動している人が多くて、きっかけを聞くと「家族や友達の誕生日に何か贈りたかった」なんていうとても身近なことがほとんど。何かを表現するという行為の日常への馴染みぶりが、当時の自分にとってはちょっとした衝撃でした。

それから数年後、アイスランドの首都レイキャヴィークで毎年開催されている街中のあらゆる場所が会場になる音楽フェス「Iceland Airwaves」目当てに再渡航。

フェスのお客さんは音楽好きそうな若い人から、赤ちゃん連れのお父さんお母さん、お年寄り、ハイファッションな人もいれば、夕飯の買い物途中に立ち寄ったような感じの人まで、ほんとうに十人十色。みんなそれぞれに音を楽しんでる姿が印象的で、そんな中で音に触れるうち、自分の中での音楽の位置も、子どもの頃と同じくらいの距離に戻ってきているのを感じました。

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音楽との向き合い方は人それぞれだけれど、日常からかけ離れた特別なことではなくて、誰でも、いつでも、もっと気軽に触れていいものなのかも?

そんな風に思うようになった頃に『DIYミュージック』を発見して受講。

講義をきっかけにフィールドレコーディングをするようになって、電車の音、お湯が沸く音、靴音もグラスの氷が解ける音も、日々聞こえてくる音すべてが面白く、味わい深いものに聴こえるようになってきました。

人生で今が一番音を楽しんでいると思うし、これから先、どんどん面白くなる予感がしています。

(text by 第9期卒業生・杉浦)



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