講義レポート

エコノミーとエコロジーの関係

「コミュニティ・リレーション学」講義レポート

「コミュニティリレーション学」を受講しようというよりは、島根県隠岐郡海士町のことを知りたい、海士町の第一人者のお一人でもある信岡さん(以下、ノブさん)の講座ならとってみよう、という動機で受講しました。私自身、「三重県伊賀地域」や「東京都北区」で地域プロジェクトを行ってきた経験より、この講座にとても期待をしていたのですが、初回を受けて「あれ?なんだか哲学的?」「あれ?地域系の講座じゃなかったっけ?」と感じました。実はここで学ぶことが、地域や社会はもちろん、小単位のチームを考える上でも非常に重要なものであることを、その時は気づきもせずに…。

コミュリレの最大のポイントは、エコノミーとエコロジーの関係。この講座では、エコノミーとエコロジーの関係が至るところで登場します。エコの語源が「家(オイコス)」のことを指すことから、「家」をつかって説明されていました。『エコロジー』は「自分たちの家・住処がどういう構造や仕組みで成り立っているのか?」という意味であり、『エコノミー』は「自分たちの家をどのように運営していくのか?」という意味、とのことです。すごく面白い考え方だし、哲学対話をするにはとても興味深い、とも感じました。

01

ただ、非常に抽象的な言葉なので、受講生はノブさんに質問しまくっていました。正直、「この講座はどうなっちゃうんだろ?」と不安になるくらい議論になりましたが、ノブさんは一つ一つの質問を流さず、とても丁寧に回答されていたのが印象的でした。後々考えれば、あの時間はとても大切だったように思えます。
それから、「都市農村関係学への招待」という小冊子をいただきました。そこには<構造編>と<ものがたり編>があり、<構造編>にはエコノミーとエコロジーの「問いかけの言葉」「目的」が比較して書かれてありました。例えば、問いかけの言葉では、エコノミーには「何が問題か?」「どういう能力が必要か?」、エコロジーには「あなたはどんなことを大切にしたいか?」「どんな人になりたいのか?」といった具合に書かれていて、とても参考になりました。<ものがたり編>にはエコノミーな「クロノ博士」とエコロジーな「ロボット・カイロ君」の物語があって、それを読んだ私は不覚にも電車で涙を流してしまいました(笑)。この小冊子を読むと、エコノミーとエコロジーがだいぶつかめると思います。

第二回の後半からは、4人ずつのグループに分かれて、エコロジー・エコノミーに関して、対話しました。メンバーは女性3人・男性1人(私)、「地域」「アート」に興味を持った面白メンバーでした。みんな、企業でバリバリ働いてきた人達で、自分たちがエコノミー(運営)寄りであったことを話しながら気づきました。「ロボットのカイロ君に共感したよね…」みたいな話をしました。

02

授業内では時間が足らず、チームで自主的に集まり、飲み会兼ディスカッションへ。各自が様々な転機を迎えており、エコロジーとエコノミーで現状を整理したり、自分の人生を考えたり。お互いの話を「エコロジー」な問いを投げかけ、穏やかで前向きになる素敵な時間になりました。まだ会って3回目だった僕たちは、昔からの旧友のようにお互いをリスペクトし、共感し合える素晴らしい仲間へとなりました。

ノブさんの言葉をお借りすると、この講座は「運営のための私たち」から「私たちのための運営」へ、パラダイム転換していく講座だと言えます。私は16年間勤めた会社を辞め、高校の教員へ転職したので、エコノミーベースからエコロジーベースへパラダイム転換したことにこの講座で気づけました。運営よりも構造に重きを置いたので、様々なことがうまく回り始めていました。にもかかわらず、欲深い私は運営に力を入れ、実績を求めていることに気づきました。どんどんエコノミーベースになっていました。コミュリレを受けてなかったら、このことに気づかず、きっと間違った方向に学校のクラス運営をしていたと思います。

コミュリレのおかげで大切なことに気づけました。チームのメンバーも開講期間にどんどん変化していき、毎回のディスカッションがとても楽しみでした。特に一人のメンバーは人生の大きな転機を迎えることになり、みんなで彼女の応援団になったりして、楽しかったですね。
講座が終わった後も、エコロジーを感じにいこう!となり、「千葉県いすみ市」へ行くことになりました。ここには、極上のエコロジーがありました。例えば、「高秀牧場」では、牛さんを改めて尊敬しました。そこには『お金』ではなく、『自然の資源』で循環している世界がありました。高秀牧場では、牛の排泄物を資源として再利用しています。このように、自然の資源を無駄にせず、再利用し循環させていく酪農を「循環型酪農」と言うらしいです。このことによって、町の活性化と食の安全に貢献していて、まさにエコロジーな世界がそこにありました。本当に感動しました。

メンバーが旗をふり、段取りを組んでくれて、アテンドしてくれて、盛り上げてくれて、癒してくれて…。そんなエコロジーな時間がとても幸せでした。この講座だったからこそ実現したエコロジーなフィールドワークだったと思います。

03

この講座を通して、「エコロジー」でとても大切な友人ができたと思っています。また、学校でも生徒と一緒に取り組んでいる「北区魅力化プロジェクト」では、まさにエコロジーとエコノミーのバランスを意識しながら、地域の方々と生徒と一緒に取り組んでおり、面白い企画に育っています。これからも幸せなコミュニティづくりを目指して、日々取り組んでいきたいと思います。講師のノブさん、キュレーターの文ちゃん・しげしげ、クラスの皆さん、1期・2期の皆さん、本当にありがとうございました! 04

(text : 児浦良裕)



関連する講義


関連するレポート