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蔵前に生まれた、自分と向き合える場所

FLY_ 63|小山将平さん/自由丁オーナー

「自由丁」オーナー小山将平さん


台東区・蔵前に、この夏オープンした「自由丁」を運営する小山将平さん。1年後の自分に手紙を送る「TOMOSHIBI POST」など、ユニークな事業を展開する小山さんが目指すのは、自分と向き合う時間の提供です。

 

自由丁」はどのようなスペースなのでしょうか。カフェかシェアスペースのような印象を持ちました。


売り物がないので、通りがかった人が、「何の店だろう」と外の看板を読んでいることは多いですね。ここは何をしてもいい場所です。仕事や勉強など作業をしても、読書をしても、ぼーっとしてもいいです。1年後の自分へ手紙を書くレターセットを販売しているので、手紙を書く人もいます。僕はこの場所で、自分と向き合う時間を提供したいと思っています。

 

 

 

 

蔵前を選ばれた理由はあるのでしょうか。 

数年前に住んでいたので愛着がありました。落ち着いていて、この町の人は淡々と好きなことをやっている蔵前の雰囲気が好きで。ここで商売をしている人は、目先の流行を追うのではなく、「町にとって、人にとって大事なこと」をやっている人が多いです。これから先の人たちに歴史や受け継がれてきた技術を伝えることを真剣に考えているなと思います。浅草の隣にある「下町」で、ものづくりの町なので、自分と向き合う、静かな時間を持つというテーマと親和性が高いと思いました。蔵前自体にも、自分と向き合う時間を持つ文化があると感じています。

 

 

お店を開いて2か月ほどですが、蔵前の町に対して印象が変わったことはありますか?

店を始めてから、少し感じ方が変わったこともあります。蔵前はすでにしっかりとコミュニティができているので、商売をやる上で学ぶことが非常に多いなと感じます。また、真新しい物をそこまで求めていないというか、既存の物事を美しくアップデートしたいと真剣に考えているお店が多いと思います。

その中で、手紙というフォーマットは昔からある古いものですが、「自分と向き合う時間を持つ」というのは見過ごされてきた価値観だと感じます。蔵前は「モノを売る」店がほとんどですが、自由丁は完全に「コトを売る」、自分と向き合う時間を扱っています。蔵前のお店は売り物がたくさん並んでいますが、ここはそうではないので、新しい価値観を伝えていくチャレンジですね。1年後の自分に手紙を書く話をすると、ピンとこないという顔をされる方もいます。

 

 

 

 

こちらのお店を開かれるまで、どのようなお仕事をされていたのでしょうか?

大学卒業後就職して、ソフトウェアエンジニアとして働いていましたが、半年で辞めてしまいました。社内で自分が望む働き方ができるポジションに行くには、3年はかかるとわかったのが理由です。会社員じゃなくてもやっていけるなと思ったことと、当時この蔵前でシェアハウスを運営していて、それが楽しかったこともあります。

半年ほど海外を放浪して、しばらく友人の会社で働いた後に、デジタルハリウッド大学が主催しているプログラミングスクールに通いました。僕のスキルは独学で身につけていたので、体系的な知識を得たり、第一線の方のアドバイスを聞きたいなと思って。働きながらではなく、学業に集中した決断は良かったと思います。
振り返って思うのは、言い訳にできる材料がなかったことですかね。
働きながら、勉強したり、起業したりするのはとてもリスクヘッジができていると思います。
裏を返せば「できなくても大丈夫」と自分に言い聞かせている状態だと思うので、自分の120%の力で物事に取り組むのは、なかなか難しいんじゃないかと思います。

 

 

キャリアのほとんどをフリーランス、起業家として過ごされてきましたが、大変だったことはありますか?

自分がやりたいことがあるなら、リスクを取るべきだと思っています。ただ、お金の問題は会社員よりシビアです。固定収入があることはメリットが大きいし、羨ましいなと思うこともあります。でも僕自身は雇われることが無理なので、また会社員になろうとは思わないですが。

独立しようか悩んでいる人や、フリーランス仲間から相談されることもありますが、選択肢を比べて判断できることは重要です。「会社員」と「独立」のメリット・デメリットを比較するような。勤めと独立自営、両方やってみてどちらが合っているか判断することがいいと思います。

 

仕事や働き方、生き方について悩んでいる人は多いですね。どんな考え方をすれば後悔を減らして生きられると思いますか?

ここにも、就活どうしようかとか、転職しようとか、悩んでいる人がたくさん訪れます。自分の中に答えはあるので、自分と向き合って、考える時間を持つことが大切だと思っています。

僕は「やりたくないけどやる」という状況はつくらないようにしています。物事の大小ではなくて、自分がやりたいかどうかで考えてコツコツ進めていくタイプなので、今の起業家という仕事は天職だと思っています。ミュージシャンとか作家にも似ているなと思います。売れる・売れない、評価される・されないは置いておいて、「自分が欲しい」と思うものを自分でつくることができる仕事は楽しいです。

  

今後、このお店やお仕事はどのように発展させて行く予定ですか?

「自由丁」でいろいろなことを仕掛けていきたいです。1年後の自分に手紙を書くのは、イベントと親和性が高いので、他のイベントに参加して手紙を書く価値を広めることもやっていきたいと思っています。

手紙の事業は2年ぐらい前にはじめて、ちょうど最初に届いた手紙の返送が始まっているところです。今は未来に送る手紙だけですが、「手紙」というフォーマットを使って別の事業も手掛けていきたいです。

店内に本棚がありますが、この「つながる本棚」は、自分の持っている本と本棚の誰かの本を交換する仕組みです。こういう交換する本棚をやっている店は多いのですが、自由丁ならではの仕掛けもつくっていって、新しい本屋の形を提案できるのではないかと考えています。お店がオープンしてから反響が大きくなったので、この先どうなるかは、まだこれからです。

 

 

自由大学で3つの講義を受講されていますが、自由大学との出会いはどんな形でしたか? 

最初に受けた講義は2年ほど前、『自分の本をつくる方法』です。表参道のブルーボトルコーヒーによく行っていたので、隣にある自由大学のことは知っていました。その当時は漠然と、本を作りたいなと思っていたのでピンときたのが理由です。その後も気になる講義があったら受けるという形で、『Lecture Planning学』『Culture Entrepreneur入門』 の2つ受講してきました。必要だと感じたら受けるという感じです。

 

卒業後は自由大学と繋がりを持たれていますか? どんな印象をお持ちでしょうか。

自由大学のイメージは、学長の深井さんのイメージと似ていて。居心地がよくて、人と人の関係がフラットだなと感じました。深井さんは講義が終わった後も、個人的にいろいろな相談をしています。僕の活動を応援してくれる大人として、困ったことがあったら都度相談していたので、信頼しています。同期との繋がりも続いていて、講義の同級生で、オリジナルウエディングのプランナーがいますが、仕事でコラボレーションできないかと動いています。

 

最後に、小山さんにとって自由とはどんなものでしょうか? 自由大学にも通い、自分の店名にも「自由」が使われています。

事前に今回の質問項目をいただいてからすごく考えて悩んだんですが、言葉で定義してはいけないと思っています。「自由」はなんのしがらみもない状態なのに、自由はこういう状態だ、と定義するとそこにはまってしまうことになる。定義すると不自由ですよね。

 

この場所から何が起きるのか、これからが楽しみです。ありがとうございました。

 

(取材:むらかみみさと)

自由丁
TOMOSHIBI POST

FB: @jiyucho.tokyo
instagram:https://www.instagram.com/jiyucho.tokyo/

◾️所在地
東京都台東区蔵前4-11-2(都営浅草線「蔵前」駅より徒歩3分)
Google Map: 
https://goo.gl/maps/6F3YuSSC1KLWhRJ56





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