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人生に問いを持ち続けるためのヒント

創立者 KUROTERUに聞く「自由大学のこれから」


10年目を迎える自由大学。この4月から新しく生まれ変わろうとしています。講義を幹として、枝葉を伸ばし花を咲かせるために。ファウンダーの黒崎輝男に、創業期から自由大学と歩んできた深井次郎がこれからの話を聴きます。

 

自由大学は、変化の芽を見つけて育む役割

深井:「これまでの価値観が覆される変化の時代」と毎年言ってますが、やはりそのスピードはますます加速しているように感じます。

黒崎:そう、この COMMUNE 2nd もそうだけれど、今は土地や場を所有していることに意味はなくて。そこをどう活用していくか、「所有価値」から「使用価値」へ変わっている。COMMUNE 2nd や、国連大学で週末開かれている青山ファーマーズマーケット。自由大学の隣に MIDORI.so OMOTESANDO(シェアオフィス)があるけど、みどり荘全体で250人ぐらいがメンバーシップでいるじゃない? 人は土地じゃなくて、場で提供されるコトに価値を感じて集まっているわけです。土地を持っているだけでは実現できなくて、どう場をうまく使っていくか、その才能と実行力が求められているんだよね。

深井:最近は、古くから親しまれたホテルの再生(THE KNOT TOKYO Shinjuku , NOHGA HOTEL 等)を手がけてますね。この間もエイ出版からムック本『TOKYO LIFESTYLE HOTEL』が出版され、特集されてました。

黒崎:コンセプトや役割から見直して、空間をキュレーションし直すのね。そうしたら利益率が大幅に改善するんです。これも同じことで、古いホテルというハードの価値は低くても空間としての価値はぐんと上がった。こうした動きはこれから加速して大きくなっていくでしょう。

「自由大学といえばポートランド」と想像する人もいるかもしれませんね。ポートランドに注目して講義や現地ツアーを始めたのは、2012年。自然豊かだけど、カリフォルニア州とワシントン州に挟まれた、オレゴン州という田舎の一都市に過ぎなかったポートランドが、今や世界中のクリエイターに注目される場になった。僕たちは今イケているものに乗っかるんじゃなくて、変化の芽を見つけて育てる役割なんだ。

深井:自由大学も今年で10年を数えますが、こう改善したらというポイントは?

黒崎:これまで自由大学は講義を行う場所だったけど、僕がやっている他の活動と協力していくことで活性化したい。枠組み自体は変わりません。ただ、改めて自由大学は単独ではなく、いろいろな枠組みの中で連動してやっていきたいね。優秀な人が集まって、より大きく育っていく場にしたいけど、別に自由大学だけでとどまる必要はありません。ファーマーズマーケットやエリアの活性化など様々なプロジェクトを手がけているけど、それらの各チームと相乗効果を作っていきたいんです。

これまでもそうだったし、その繋がりは変わらないんだけど、正直うまく機能していない部分もあったよね。各チームが目の前のことで精一杯になり、外へ踏み出す余力がなかったように思います。講義を提供するだけの場になってしまっていたので、それを変えていきたいですね。今回の運営体制の変更を機に、できることはとても増えていくでしょう。

人生の大切なものを見つけ、組み立てるために学ぶ


黒崎:
社会の変化に気づいて適応するためには、興味関心を持って学び続けることが必要です。学び無くして生きていけない時代になるから、学びの場として自由大学の役割はいっそう重要になってくるはず。一歩踏み出すと可能性は大きく広がるものでしょ? 誰でも、いつからでも学べるし、一生学び続ける必要がある。そういう人が集まる自由大学の良さを高めていきたいですね。

だけどこの「学び」というのは、学校で教わることと同じではありません。むしろ変化に鈍くなり、自分で考える力を奪ってしまうこともある。そこで大事なのが、「学問」と「学習」の違いを意識することなんです。問うことを学ぶのか、習うことを学ぶのか。自由大学は前者だよね。ここに集う生徒は、教えられたことを学習し、言われたことをやるんじゃない。学ぶことで問いを持ち続ける体験をしていくんです。問いは学びの中から生まれるんですね。

深井:既存の学校と自由大学はどのあたりが違うか、というところもうまく言語化して発信していきたい。

黒崎:日本の教育で、「問いを持つ人間」を育てることは困難でしょう。日本はすべてを分断しようとしがちですから。みんな、仕事の成功とか肩書を求めているんじゃなくて、仕事も家庭も趣味も「トータルでいい人生を送りたい」というのが本当のところだよね。それを社会の仕組みが邪魔している。仕事も家庭も趣味も、全部繋がれば、もっと大きいことができるのに。

視野を狭めて、考えないで目的を達成する方がうまくいく社会だからしかたないよね。その効率化のテクニックを持つ人が、成功者となり評価される時代でもあった。だけどその結果、日本中が自転車操業になっていて、足を止めたり、躓いた瞬間に終わってしまうようになった。だから苦しくても自転車を漕ぎ続けるしかないんですね。

そこから抜け出すために必要なものが、自由大学の追求する学びでしょう。長年続いている靴磨きの講義「20年履ける靴を育てる」があるよね。何十万円もする靴を何百足も持っている人や、経営者が他の受講生と肩を並べて、靴磨きの方法を学ぶ。実際に見知らぬ人の靴を磨く経験をしたら、新たな学びを体験するに違いありません。

「自由大学はカルチャースクールと何が違うか」という点もよく聞かれるけど、ぜんぜん違いますよね。くり返しになるけど、教えを習いに来る場ではないから。僕たちも問い続けるし、問いを持つ人を育てたいですね。自由大学だからできること、反骨精神を取り戻すことかな。新しい「学問のすすめ」を提示したい。

働き方が問われる中で、自由大学がやるべきこと
「自分を曲げなくても食べていける社会に」

黒崎:世の中さ、悲しいかな、正しいことが儲かるわけじゃないでしょう? 正しいことをしたくても、お金を稼げないと生きていけない現状がある。だとしたら、正しいことをするために仕組みを学ぶ必要があって。その学びを提供するのが自由大学だと考えています。学び続け、問いを持ち続けることで、仕事が生まれると思う。

これからは新しい仕事が必要。既存の評価軸の中で時間やスキルを切り売りして、雇われ人として得るお金ではなく、「それって仕事になるの?」という誰も考えなかった方法で稼ぐことに価値があるんですよ。

深井:新しい仕事、価値観を作り出す場として、自由大学を使って欲しいですね。

黒崎:今の時代への問題意識を変えていくのが、自由大学の役割。問題意識がなければ、変化に対応はできない。問題意識がないのに資格を取るというのは、真逆の思考じゃない? 疑問を持っていない人がスキルを得ても何の役にも立たないけど、そういう人が溢れてしまっているでしょう。役に立たないようなものがたくさんあって、みんなそれに気づいているはずなのに、不安だから今まで通りのやり方に固執してしまう。わかりやすいから、しかたないですけどね。

これまで、社会は疑問や変化を邪魔していました。成功体験をコピーして若い人たちを労働力として利用していれば、国は豊かになったから。でも今は、そういう時代じゃないよね。これからは、空き地を見つけてそこで自分の作品を売ってみるような、経済がないところにゼロから仕事を作る力が求められているんです。

2017年に『TRUE PORTLAND』という本を出版して、今は4万部出ているのかな。メディアサーフで企画から編集、印刷までやったよね。ひとりきりでこの1冊を作るのは難しいかもしれないけど、スキルを持ち合ってコミュニティで作るなら、それほどハードルは高くない。2020年版を作ろうという話も出ているし、こういう取り組みを増やしていきたいね。この『TRUE PORTLAND』の最新版も、今度は最初に出資を得て作る方向で進んでいる。最初に持ち出しをして売り上げで賄うんじゃなくて。最初からお金の算段がついていれば、現地の取材など、できることも増えるし。今は売ることも難しくないよね。作って広げるところまでできれば、自分たちで出版社、取次、書店までなれるんだよ。

深井:どう仲間をつくるか、そこに苦戦している人も多いように思います。

黒崎:仲間集めにも、発想を変えることが求められている。いま「フードエクスペリエンス」という取り組みをしているけど、飲食業がどこも人材を集めるのが難しくなっている中で、それを打開する方法になるでしょう。

今は労働力を提供する人材の奪い合いになっていて、労働力を得るために「給料上げる」とか、待遇の話のみになってしまっているね。給仕をするだけの人を集めることは、「時給はいくらもらえるの?」という労働の対価しか考えない人を雇おうとすることで、持続性も発展性もありません。「食」という軸で興味のある人を集めてコミュニティ化することで、個人もコミュニティも可能性や、やれることが広がっていくわけね。

こういうアイデアと機会とリソースを得るには、いろいろな知識を得て繋がることが必要になってきます。そのための学び。自由大学が重視している「キュレーション力」は、問いを持つ人だけが得られるものなんです。今はキュレーションの時代。そして一生学び続けるコミュニティとなることで、価値を発揮できるはず。

深井:問いがあるところに学びがあるし、その学びから新たな問いが各自に生まれるサイクルが理想ですね。

黒崎:どんな信念や思想に基づいていてもいいけど、「社会を良いほうへ変えたい」という気持ちを持つ人が集まって欲しい。僕は学生運動の最盛期(70年代初頭)に早稲田の学生だっだんだけど。あんなに過激だった活動家の同級生たちも、卒業した途端にみんなネクタイを締めて大企業に就職していったんです。だけど、僕はそうはならなかった。世界中を旅してヒッピーだったけど、自営でお金を稼いでいたから、自分を曲げる必要がなかったんです。自分を曲げなくても食べていける社会にしようよ。サラリーマンになることで得られるものは、もうほとんどないでしょう。名札や看板だけが重視される、そんな世界からの変化に取り残されないようにしないといけません。

自由大学が重視するコミュニティの力

深井:自由大学がこれからどう変わるかは今、毎日みんなで考えています。

黒崎:そう、今後の発信を期待して待って欲しいですね。仲間を増やすためにも、もっと自由大学やそれに関わるコミュニティを知ってもらう必要があると思っています。自分自身がメディアになる時代で、自由大学にとっても発信は重要です。ZINEを作るとか、ウェブサイトを改修するとか、ありきたりでも大事なことはやっていこうよ。

自由大学自体も、講義を1回やって何人集めて売上げがいくら、という考え方ではダメだし、それをやっていてはつまらないと思うよ。僕がやっている自由大学以外の取り組みとコラボレーションしていくのもいいでしょう。

あとは、この場所があることの価値を最大限にしていきたいね。自由大学が仕事を作って分配することはしないけど、そこらじゅうに起業のタネが転がっているわけだから、あとはアイデアと実行力がある人がお金にする方法を考えればいいんじゃないかな。流行りそうなもの、売れそうなものばかりを考えようとするから、みんな模倣になってしまうんです。そういうものは自由大学じゃなくてもできるからやらない。とにかく、細かいルールを決めないで、柔軟にやっていきたいね。「自分の人生は、これからも変わっていくし、変えられる」それを知る人たちのコミュニティを作って、コミュニティとして動く場面も増えていくでしょう。

自由大学イコール講義とか、ここという「場所」ではなくて、「コミュニティ」なんだよね。新しい学びを作っていくコミュニティで、生徒や教授や、他のコミュニティと繋がりながら育っていくんです。問題意識を持っている人たちが集まってきて、そこから事業が生まれて、実業に繋がっていくはず。そのために、常に人が溢れているコミュニティを作りたいですね。オーディナリーも自由大学から生まれたわけだし、どんどん深井さんたちみたいにさ、長く自由大学と関わり続けてくれる人との出会いを期待しています。


<プロフィール>

黒崎 輝男(くろさき てるお) 自由大学創立者 【写真右】

1949年東京生まれ。「IDĒE」創始者。 オリジナル家具の企画販売・国内外のデザイナーのプロデュースを中心に「生活の探求」をテーマに生活文化を広くビジネスとして展開、「東京デザイナーズブロック」「Rプロジェクト」などデザインをとりまく都市の状況をつくる。 2005年流石創造集団株式会社を設立。2009年新しい学びの場「自由大学」を開校。Farmers Marketのコンセプト立案/運営の他、,「IKI-BA」「みどり荘」などの「場」を手がけ、 “都市をキュレーションする”をテーマに、仕事や学び情報、食が入り交じる解放区「COMMUNE 2nd」を表参道で展開。通称くろてる。

深井 次郎(ふかい じろう)   自由大学運営、教授 【写真中央】
1979年生。大卒後、IT系上場企業の子会社立ち上げを経て、2005年独立。25歳で出版し「自由の探求」がテーマのエッセイ本など著作は累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。2011年法政大学に「dクラス」を新設。2013年株式会社オーディナリー設立。書く人が自由に生きるウェブマガジン「ORDINARY」創刊。自由大学の運営の中心を担い、講義「自分の本をつくる方法」「Lecture Planning」の教授をしている。

文:むらかみみさと (ORDINARY)
写真:YUKI (ORDINARY)



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