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「誰の街か」佐藤大智

『CREATIVE CAMP in ポートランド』キュレーターコラム

6月から暑く、もう今年の夏に十分浸った気がしてしまいます。お盆休みの計画を考えたときに、ふと「本来お盆は祖先の霊を祀る期間だよな」と思いました。それとは関係なくお盆休みがバケーションとしての夏休みとして扱われることも多いですが、実家に帰るという人も多いと思います。この時期になると「お盆は実家に帰るの?」と何気なく質問をするくらい、意外と無意識に実家(祖先)や地元に紐付いているのかもしれません。キリスト教圏やイスラム教圏は神と個人の関係、日本は土地や家など先祖代々のフローの中の個人という印象があります。

大きく見ると日本という国ですが、基本的に個人が所有する土地の集まりによって成り立っています。ソフト面を考えても、そこに住んでいる人々によって日本が成り立っているはずです。しかし、あまり自分の暮らしが自分の行動の影響によって作られている感覚は実感しにくいのではないでしょうか。せいぜい表面的な、会社のなかでの仕事がどうとか、新しい服を買っちゃおうかなくらいの暮らしの影響。(もちろん、それらの根本的なところはとても重要だとは思います。)生きるために必要なことが高度に分業化されているので、日々の仕事が暮らしと直接的に関係なく、またに住んでいる地域の人と関わりがなくても生られてしまいます。それは、文明が発達した恩恵でもあるのですが、当事者意識をもって自治をしながら暮らす人が減ってしまうのではないかという危惧があります。そこが危うくなると、徐々に暮らしの根底がもろくなっていくのではないでしょうか?

しかし、祖父母のような強い土着意識のない僕が東京に住みながらどうしたらいいのかという問いには、まだ明確な答えはありません。それに対して2年前にポートランドに行ったときに少しヒントのようなものを感じました。現地の人との会話のなかで、「そうしたらこの街がよくなるでしょ」というセリフを何度も聞き、とても驚きました。まちづくりの文脈の会話をしていたわけではないのですが、自然と口にしていました。個人の趣味嗜好や得意なことを発揮していった結果、共創が起こりいい街になっていく。そんな簡単なことではないと思いますが、大切な要素のはずです。住みやすい街として有名になったポートランドですが、人気になりすぎて人口が激増し、地価が上がり、もともと住んでいた人が他の地へ引っ越すということが起こっているようです。ここ数年のポートランドの変化を聞くと、完全に理想的なお手本としてではなく、良いところも、悪いところも、その変遷も含めて参考になるのではないかと思っています。9月に2年ぶりにポートランドに行くので変化を肌で感じるのが楽しみです。

 

(担当講義:CREATIVE CAMP in ポートランド

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