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「4世代暮らしの時間軸」佐藤大智

新春クリエイティブチームコラム

子供のころ、曽祖父、曽祖母とも一緒に4世代で暮らしていた。父親が子供のころも4世代で暮らしていたそうだ。祖父と一緒に裏山を歩くと、「これは◯◯じいちゃんが植えたやつだな」、「こっちは◯◯が植えた杉だ」などと話しながら歩く。祖父の祖父が植えたという木は、つまり約100年、5世代の時を跨いできたのかと圧倒され、普段意識しない身近なものが内包する壮大さに驚いた。4世代前の行動が自分が生きる今の世界の一部を構成していること、そして4世代先にも行動の影響を及ぼすことができるのだとありありと実感した。今でこそ言葉にできるが、当時はそんなことをワッと感じていた。

今の母屋は祖母が嫁いできたタイミングで建て替えたそうだ。その建て替えは山から木を切り出すところからはじまったと言っていた。記憶が正しければ完成まで3年近くかかったらしい。昔は育てた木を木材として卸していたが、今は毎日お風呂を沸かすための薪として使っている程度だ。去年は、玄関の天井を新しくするために久しぶりに太めの木を切ったと言っていた。

日々の暮らしが世代を越した贈り物によって成り立っている。それは、数世代前の人が自身が生きている間にリターンがなくとも行動した結果のおかげだ。しかし、現代では数世代先も意識して行動する人がどれだけいるだろうか。イメージをしても数世代前くらいしか実感のある想像をすることができないが、世の中には数百年、何千年前、何万年前からの贈り物もある。想いを馳せられなくても、過去の人がつくった「今」の積み重ねによって僕らが生きる今の社会、暮らしがあるのは確かだ。

祖父が「ここらへんは俺が若いのときに植えた木だ」という一帯を見たあとに、自分も山の斜面に木を植えた。静けさの中でしっかりとした鼓動が身体に響き、空気は凛としていた。今、その木はどうなっているだろうか。今も木を植えているだろうか。

(text: 佐藤大智 担当講義:カメラで捉える感性CultureEntrepreneur



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