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人との出会いと盛り付けが新しい世界に連れて行ってくれる

「おうちパーティー学」「おいしい盛り付け学」教授 / 飯野登起子さん

すでに20期を迎える人気講義『おうちパーティー学』。教授の飯野登起子さんは、『おいしい盛り付け学』や尾道自由大学で『盛り付けデザイン学』を開講するほか、盛り付けを軸に幅広く活躍されています。20年近く「お母さん業」を専業にしてきたという飯野さんは、どんなきっかけで自由大学と出会い、活躍の場を広げてきたのでしょうか。自由大学クリエイティブチームの岡島悦代がお話を伺いました。


– 「おうちパーティー学」は2011年の11月から6名の受講生でスタートしました。6年ぐらい前になりますね。

最初は少ない人数から始まりましたね。自由大学との出会いは、SUGEEさん(旅するシャーマン、ボーカル&ジェンベ奏者)が教授の「旅学」のゲスト講師として2度ほど呼んでいただいたことです。私は料理研究家ではありませんでしたが、講義で料理をつくりました。1度目は南インドと北インドのカレー、2度目は台湾の郷土料理を再現して振る舞いました。

「自分も講義をつくりたいな」と思うようになって、『盛り付けデザイン学』のアイデアでレクチャープランニングコンテストに出たのですが、優勝はできませんでした。「この内容では5回はもたないよね」というフィードバックも受けました。でもその後、和泉里佳さん、小酒ちひろさんなど自由大学クリエイティブチームのみなさんに手伝っていただいて講義化の道を拓くことができました。

 

– そのとき優勝したプランは、講義化はされなかったんですよね。こういうケースはよくあって、熱意とタイミング、ご縁があって講義化に繋がります。

あのときあっさり諦めていたら講義化はなかったと思います。自由大学に関わる前から、「green食堂」という架空の食堂を自宅でやっていたのですが、そこに和泉さん、小酒さんに来ていただいて。ご飯を食べながら打ち合わせをしているときに、和泉さんが私のスペシャリティは「おうちに人を呼んでおもてなしをする」ことだと気づかせてくれました。

私としては特別なことをしているつもりはなかったので、最初ピンと来なかったんですけどね。「講義にするのだったらこれがいいと思います」と言ってくださって、2011年に開講することができました。

 

– 自由大学で講義をおこなう前からやっていたことが「おうちパーティー学」に繋がったのですね。もともと、レクチャープランニングコンテストに出した「盛り付けデザイン」のようなことを仕事でされていたんですか?

仕事としてはおこなっていませんでした。私は多摩美術大学のグラフィックデザイン科を卒業したあと、グラフィックデザイナーの先生のアシスタントを長男がお腹にいた臨月まで続けました。3人の子供に恵まれ、夫の家族と同居していたこともあり「専業お母さん」+お嫁さんをしばらく続けました。なので、17、8年ぐらいは社会と断絶されていましたね。

 

– 家庭に入っている間にも、表現することは忘れなかったのでしょうか?

子育てをして、家事をしてとなると、自分の時間を取ることは難しかったです。なので家の中でも楽しめること、小さな水槽をいくつも置いて鑑賞したり、毎月植木市へ出かけ、山野草の鉢を増やしていったりしていました。小さなことでも、自分の置かれている場所を楽しめるように心がけていました。

結婚して12年ぐらい経ってから夫の実家を出て、夫婦と子どもの生活になって、はじめて「自分の台所」を持つことができました。好きな料理家の本を徹底的に揃えて勉強し、料理をつくったり、パンやお菓子を焼いたり。自分の好きに買い物をして好きなものをつくっていい、ということをはじめて経験し、週末には友達を招いたりと、それが現在の活動に繋がっていきます。

 

– パーティーというと、大変そうとか、身構えてしまう人も多いのではないかと思います。そのハードルを下げる、気軽にできることに気づかせてくれることが、飯野さんの講義が普遍的に新しい受講生を引きつけるポイントなのではないでしょうか。

自分がホストとなって開催する場合、自分のスキルや余裕に合わせて組み立てることができます。また、講義を通して、「おうちでパーティーができるんだ」と知ることで、うまく取り入れるシーンが出てくると思います。私は子どもの成長過程でもおうちパーティーって大事だと思っているんです。食を通して子ども同士、親同士の繋がりもできます。お母さんにとっても、特に子供が小さいときはなかなか外食ができないですが、自宅であれば自由に、気軽に家族や友人と食事ができます。

講義で話していることですが、おうちパーティーのポイントはホストである自分もなるべく着席していることだと思います。そのためにお出しする料理の準備や順番を考えたり工夫をする。パーティー中に自分が立って作業するのは、ゲストにも気を使わせてしまうので、私の中ではNGです。その人を知りたい、話したい、大切な時間にしたいので。

また、自分の力量にあわせて、惣菜を買ってきて、盛り付けを楽しんでもいいと思います。そういう、無理なく自分も楽しむとか、「ルール」を自分なりにつくってやると楽しめるのではないかなと。

 

– そのルールが、何度もおうちパーティーを実践されてきた飯野さんの経験から出たものというのが説得力がありますね。

自宅に招くというのはプライベートな部分を見せることです。部屋を見ればその人の人となりや趣味がわかります。だからコミュニケーションをきちんと取りたい。それが難しい状況なら、外食にすればいいと思います。優先順位を考えていき、その人ならではのおうちパーティーが出来れば良いですね。

最初の講義から6年ほど経って、ライフステージが変わって結婚や出産をした生徒さんもたくさんいます。そのときに私が講義で話したことの意味が役に立っていたら嬉しいです。

飯野さんの盛り付けデザインやスタイリングの実例をまとめたフォトブック

–  尾道でも講義をされていますが、東京の自由大学でやっていることと違うことはありますか?

2013年12月に、尾道自由大学校長の中村真さんに「食の講義がまだ無いので」とお話を頂きました。視察として尾道に初めて行って、尾道の陶芸家の工房や道の駅のような所へも連れて行ってもらい、現地で生まれた器に現地の素材を盛り付けて、ということをやりました。「すごいところだな」というのが最初の感想で、商店街はひなびているが懐かしい感じがする、魅力を感じる町でした。

尾道自由大学での「盛り付けデザイン学」は2014年の春に7人ではじまり、今秋に9期を迎えます。少人数でも開催していますが、それは私にとって尾道に行く意味、価値があると思っているからです。尾道に着いたらまずすぐに連絡する人、会いたい人がたくさんいて、私を待っていてくれる人がいる。人がつながっていく場所だと思っていて、何物にも代えがたい場所だと思います。

 

–  自由大学で講義を始める前とそのあとで、飯野さんのお仕事や活動はどう変わりましたか。 なにか広がりなどありましたか?

講義をきっかけに、どんどんご縁が繋がり、昨年から島根の窯元と繋がりが出来ました。

器自体もかっこいいのですが、盛り付けを楽しんだり、食卓でどう使うかをディスプレイしたら、別の魅力を伝えることができます。それに、お皿一枚だけじゃなくて、マグカップを買おうか、という売上に繋げることもできると思います。

自由大学から尾道に繋がり、そこで島根に繋がって、今年は民藝の分野に携わるきっかけをいただいています。他にも、尾道で講義を受けた方から頼まれて、昨年、ニューヨークのエンパイアステートビルでのパーティースタイリングをやったこともあります。

3年ほど前のことですが、「新盆栽学」教授の塩津丈洋さんがgreen食堂にいらしたとき、彼も美大出身なので「物を魅せる」ことについて話が盛り上がって、「植」と「食」で、二人展「植と食展」をやりました。。そのとき知り合った陶芸家の作品をとても気に入って、他のお仕事でも使わせていただいたり、どんどん繋がりが出来ています。

 

– 多くの方が「仕事やお金に繋がる」という視点で「こういうスキルを付けなきゃ」「こういう経験をしなきゃ」と考えがちです。その点、飯野さんはライフスタイルが変わる中で、さまざまなことに試行錯誤して、経験を自分の物にしていったんだなと感じます。

そうですね。生きているうちはネガティブな出来事が起きたり、大変な状況になることもありますが、ポジティブに考え、前向きに進むことが大切だと思っています。私も、大変なことも多かったですが、大家族のお嫁さんをやってきた経験は、気遣い、人とうまくやっていくことを学ばせてくれました。

人生アップダウンが必ずあって、何かをスタートするタイミングというものがあると思います。私の場合、次男が高校生になるタイミングで、興味のある食に関する活動をしたいなと思って、100回ぐらい開店している「green食堂」や、料理研究会という、毎月、テーマを設けて、料理を持ち寄って盛り付けるという会も80回ぐらい開催しました。そういう料理に関する活動をブログで発信して、当時池尻にあった自由大学に繋がっていったんです。

私のライフステージの中で、子供に手がかかる時期が終わりを迎えていたこともあり、ちょうど動き出せるタイミングが来たんですね。

–  状況を楽しめることが飯野さんの才能じゃないかと思います。それを自然にできる人とそうじゃない人がいるので。自分の経験や考えを自然に共有できることが飯野さんの講義や活動の魅力だなと改めて感じました。最後に、今後こんなことに取り組みたい、ということはありますか?

今後のことについては、はっきりわからないですね。毎回、講義には新鮮な気持ちで取り組んでいますし、新しい出来事や気付きが必ずあります。化学反応が起こっているというか、どんなことが起こるかわからない、常に新しいものが生まれる感覚があって、講義は究極のサービス業だと思っているので、その人なりの満足や面白み、学びを持って帰ってもらいたいです。

今後地方でいろいろな計画もあるので、その地方ならではのことをやりたいですね。いろいろな仕事をやる中で「盛り付ける」ことは自分の軸になっているので、陶芸家の方とコラボレーションしたり、生産者さんに出会えることも魅力です。

ゆくゆくは面白いおばあちゃんになって、若い人の仲間に入れて頂き、仕事を続けていけるのが理想ですかね。

 

–  飯野さんの、自然体で自己表現しているところに勇気づけられる方が多いのではないかと思います。ライフステージが変わる中で、これまでと同じことができなくなったり、軌道修正を必要とすることはあっても、自然体で「それでいいんだ」と思わせてくれるのが飯野さんの魅力です。

 

誰もがクリエイティビティを持っていることを自由大学は信じているので、それをこれからも講義などを通して引き出していただけたらと思っています。本日は、ありがとうございました。

担当講義:「おうちパーティー学」「おいしい盛り付け学

文、編集:むらかみみさと(ORDINARY) 写真:武谷朋子



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