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武谷朋子さん( unithé 代表 )|FLY_048

旅、暮らし、仕事、全部ミックスが面白い。ベトナム暮らしから新たなステージへ

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じぶんスタイル世界旅行」のキュレーター武谷さんは、「旅の賢人」としてヨーロッパ旅ガイド本の執筆に協力したり、ベトナム在住時に出会った「希少で高品質な茶葉」を日本に広めたりと、フリーランスでさまざまな活動をされています。自由大学の講義を複数受け、講義をつくる側のキュレーターになった武谷さんに「好き」や「得意」を仕事に変えた転機についてお話をうかがいました。


 

― まずは自由大学に通い始めたきっかけを教えてください

2012年当時は、大手情報メディア企業の企画職として働いていて、とにかく忙しく、やりたいことがあっても物理的な時間が取れない状況でした。でも「時間がないことを言い訳にして、このまま何もやらなくていいのかな」と思い、“自分で時間を創りにいく” つまり「やりたいことで予定を先に埋めてしまおう」と思った時に、興味があった講義がちょうど募集をしていたことがきっかけで自由大学に通い始めました。結果的にメリハリのある時間の使い方ができるようになりましたね。今はやりたいことで先に予定を埋め、それに合わせて仕事やプライベートを調整しています。

 

― 今までにいくつも受講されていますが、講義選びのポイントは?

自分の興味に蓋をせず、ピンときた講義を選ぶことでしょうか。ヨーロッパが好きで、大学生の頃から毎年のように行っていたのですが、単なる観光から踏み込んで都市の作り方や在り方について学ぼうと選んだのが「クリエイティブ都市学 – Stockholm」、「入門日本酒学」はその頃日本酒に目覚めて、自分の好みをもっと深く知りたかったから。お酒が好きなのもあります(笑)。「自分の本をつくる方法」や「お店をはじめるラボ」は、自分のちょっと先の未来で「こんなことをしてみたいな」という観点から選びました。学びはすぐに効果は出なくても、あとから必ず役に立つので惹かれたものは受講するようにしていました。

 

― 自由大学から特に影響を受けたことは?

講義によってクラスの雰囲気も来ている層もまるで違うので、内容はもちろん、出会う人からも学びがありました。個性はバラバラなのに、みんなフットワークが軽く好奇心が旺盛という共通点がある。私がベトナムに1年半住んでいる間に、自由大学の友人が何人も遊びに来てくれました。自由大学で出会えた人とは、これからも世界のどこかで遊んじゃうんだろうなと思っています。

 

― ヨーロッパ好きの武谷さんがどうしてベトナムに?

きっかけは夫の赴任です。当時私はベトナムに全く関心がなかったのですが、その環境に身を置いてみたら「何が起こるだろう」と逆に興味が沸いて、仕事を辞めて行くことにしました。現地に渡ってからは興味のない土地だからこそ、自分の心地よい暮らしをみつけようと、面白そうなものをみつけたらすぐに出かけました。砂丘を見にひとりでベトナム国内の旅に出たこともあります(笑)

 

ベトナムに住むとなった時に、初めて自分が持っている荷物の多さに気がつき、何とか減らしてスーツケース1個で旅立ちました。帰国した今も「今週末から海外に住むよ!」と言われたら、すぐに出発できる荷物量を保つようにしています。いつも身軽でいたいんです。

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路地裏に入ると飾らない暮らしが見えるから、いつもふらりと迷い込んでいました  Photo by Tomoko Taketani

 

― 自身のサイト “TRANSIT LOUNGE” で、キュレーター業務のためにベトナムから一時帰国する様子を掲載されていましたね。自由大学でキュレーターになったきっかけは?

クリエイティブチームから声を掛けていただきました。私自身、まとまった休みが取れなくても「日程が少ないから、何かを諦める旅」でなく「限られた日程で、最大限に楽しめる旅」を創ろうと毎年工夫を重ねてきたので、そういった経験が活かせそうだということと、自分らしく旅をする人が増えるきっかけ創りをしたかったこともあり、講義の主旨に賛同しキュレーターになりました。

 

― キュレーターとして心掛けていることを教えてください

自分がしてみたい旅のイメージはあっても、「予算がない」「時間がない」「言葉が通じない」と不安から一歩を踏み出せない人が、講義を通じて「思っていたよりハードルが低い」と気がついてくれたらなと。旅には実は “スキル” を必要とするところがあって、例えば「安く済ませる方法」はいくつもある。この講義には旅好きの人の経験値がたくさん集まるので、1つでも多くの話を引き出して共有できるよう、私も ”旅好きのひとり” として場に加わることもよくあります。お互いの経験を混ぜ、新しい価値観に昇華させたいんです。

 

― 受講生たちのその後は?

自分のしたい旅を実現した方はたくさんいます。講義はやりたいことを洗い出すところから始まるので自分自身を振り返るきっかけになるようですね。その結果、好きなこと・やりたいことがクリアになって、旅の仕方だけでなく日々の暮らしまで変化が起きている方や、キャリアチェンジをした方もいます。

「民族文化を知る旅」をプランニングした方は、会社を辞め政治経済について学ぶ専門機関に移籍したり、「世界一周旅行をしたい」とこの講義に来た方は「21世紀を創る教育イノベーションを巡る旅」というテーマで旅を創り、各国の教育機関の取材をする旅をした後に未来の教育を創る活動を始めました。「この講義に来なかったら、バックパッカーとして漫然と世界を見て終わっていた」と言ってくれました。

 

― 人生が変わる講義になったと

旅は突き詰めると “暮らし方” や “生き方” に直結するんですよね。旅のスタイルを変えれば、視界が変わり、得られるモノも大きく変わる。回数を重ねるほど知見が貯まり、より軽やかに旅ができるようになる。自分がやりたいことや興味のあることがどんどんクリアに見えてきて、旅の濃度が上がっていきます。誰かと同じ旅ではなく、自分で創造していく旅を始めたら「自分が変わった」という話を聞く度に「この講義に携われて良かった」と思えるし、同時に旅の面白さをもっと伝えたいとも思うんです。

 

― 「伝える」といえば、旅の本の執筆やWEBマガジンの連載もされていたとか

旅の賢人たちがつくったヨーロッパ旅行最強ナビ』という本の執筆に参加しました。海外旅行を始めた頃はすべてが新鮮で “インプット”  重視でしたが、ここ数年はそれを必要としている方へ伝えたいという “アウトプット” 思考になってきたので、「自分の本をつくる方法」から生まれたWEBマガジン「ORDINARY」でもベトナムの暮らしを現地から感じたままに綴りました。

全10回の連載のうち半分は食べ物の話になってしまって…(笑)やはり環境が変わると不安がどうしてもつきまとうものですが、そんな時美味しい食べ物に救われたんですよね。私にとって「食」は暮らしの豊かさに直結するんだと書いてから気がつきました。

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「帰りたくなくなるくらい、ベトナムが好きになってしまったんです。これからはunithé (ウニテ)の事業を通じてベトナムとつながっていきたいと思っています」

 

― 暮らしてみると旅では見えない面も見えてくるのでしょうね

例えば、ベトナムの飲み物といえばベトナムコーヒーが有名ですが、苦すぎたり甘すぎたりで、お米や麺類と一緒に飲むものではないんです。無糖で美味しい飲み物が欲しい…と街を歩いて探していた時、一軒のお茶専門店がありました。偶然お店の奥の茶室で行われていたテイスティングに参加させてもらうことができ、そこでベトナムで生産されるお茶の話と共に、さまざまな種類のお茶を飲ませてもらいました。その時、お茶の美味しさに感動したのはもちろんですが、これまで飲んだことのない味にかなりのインパクトを受けました。それ以降、そのお店に通ってはファウンダーの方とお茶の話をたくさんするようになり、知れば知るほどベトナムティーカルチャーに魅了されていきました。

 

ベトナムではみんなお茶をよく飲みます。ごはんを食べるとき、会話をするとき、人と人との繋がりの中にはいつもお茶があるんですよね。こんな素晴らしいお茶がベトナムでしか体験できないのがもったいないと思い、unithé(ウニテ)というお茶のお店を始めました。オンラインショップが中心ですが、リアルな場にもどんどん出ていきたいなと思っています。ベトナムの希少なシングルオリジンティーを扱い持続可能な社会を支えながら、日本では知られていないベトナムの豊かなティーカルチャーを伝えていきたいと思っています。

 

― 今後の展望をお聞かせください

ベトナムで暮らしてみて、これまで続けてきた移動がベースとなる旅とはまた別の学びがありました。考え方も視点も大きく変わりました。いまは「暮らし」そのものにとても興味があります。海外暮らしでの学びを形にすることもしたいですし、unithé(ウニテ)の事業を通じて、暮らしのちょっとした時間をもっと豊かにするお手伝いができたらと思っています。そして、自分らしく旅をする人が増えるきっかけ創りは今後も続けたいです。

 

― これからも楽しみですね。本日は、どうもありがとうございました!

 

 

\ 武谷朋子さんがキュレーションしている講義 /

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取材と文: 川口裕子
写真:JIRO
編集: ORDINARY



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