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自由な精神は自分でつくる

市川雅恵/日本茶、コトはじめ 教授

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お茶には絶対にこうしなければいけないという決まりはありません。このお菓子にはこのお茶という決まりもありません。お点前が決まっている茶道の世界とは真逆といってもよいほど、煎茶は「フリースタイル」なのです。煎茶道という煎茶のお点前の世界もありますが、やはり自由度が高いと感じます。

歴史上16世紀後半に初めて日本にもたらされた煎茶は、しだいに分裂と収縮へと向かっていった茶の湯(茶道)に代わるもうひとつの伝統として発達しました。身分の違いや豪華な道具とは無縁の「自由と個性の可能性を象徴する」存在から煎茶はスタートするのです。
現代社会で急須をつかって茶をいれる人は減っています。世の中にはもっと便利で簡便なものがあふれかえっています。ですが、ふっと思うのです。自分自身がパソコンばかりの生活、手作りではない食事が続くと実感するのです。便利なものばかりをチョイスして生活すると五感はどんどん鈍くなる。五感が鈍くなると、直感力が鈍くなる、直感力が鈍くなれば判断力が鈍くなる。ひとつかみの茶葉に湯をいれる、たちまち茶の香りが漂い、静かに待って茶を注ぐ、ただそれだけのことなのに、ほんの一瞬、世の中の喧騒が消え、五感に響くのです。
同じ茶葉であっても、その日の自分の気分や体調に合わせて「今日は疲れているから低温の湯でいれて甘味を出そう」「今日は目を覚ますために濃いお茶にしよう」といれ方で調節もできます。無意識の中で自分の身体との対話。相手にいれてあげるときも同じように、少しばかりの想像力が必要になり、その気持ちが「おもてなし」につながるのでしょう。
茶の効用や癒しの力は皆が認めるところですが、小難しいことはおいておき、フリースタイルで煎茶を生活に取り入れる人が増えると嬉しいですね。

 

【text:市川雅恵/日本茶、コトはじめ 教授】
次世代型日本茶研究家 CHA-ICHI WORKS代表。ワークショップや
イベントなどで若い世代にも日本茶の楽しさ面白さを知ってもらう
活動を行っている。



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