この夏、ポートランドで開催されるサマーキャンププログラム。英語が得意ではない人でも楽しめるし、滞在場所もうまく工夫することで、旅行では味わえない体験ができそうです。引き続き、プログラムのプロジェクトディレクターを務める松村要二さんに伺いました。聞き手は自由大学学長の和泉里佳さんです。
聞き手:和泉里佳(自由大学学長)
構成&写真:高橋宏文(フリユニラジオ編集長)
part1 ポートランドの街とPNCA
part2 自由に組み立てていくサマーキャンプ
自由に組み立てていくサマーキャンプ
和泉 今回のサマーキャンプは1週間の流れとして、まず最初は日曜日からスタートするプログラムにしていて、サンデーイブニングパーティーからスタートしようというかたちになっていますね。
松村 アメリカは、とくに学校では毎週1回パーティーをやるというのがカリキュラムに入っているぐらいパーティー好きですね。日曜日に三々五々集まった人たちがPNCAのどこかで全員顔合わせして、次の週の日曜日に卒業おめでとうということと、次に来るグループの人たちとそこで顔を合わせるようなシステムになっていますよね。
和泉 日曜日にパーティーをして「これからがんばろう」というようなところで始まってから、月曜日から金曜日まではプログラムに参加して、土曜日はもしどこかに出かけて行きたい人がいれば、近くの郊外に出かけることもできるでしょうし、もうちょっと街を探求したいということであればそういう時間にも使えるでしょうし、最終的な作品を仕上げるような時間にも使える。そしてまた日曜日はパーティーで終わる。それがずっと3週間繰り返していくようなイメージで、ちょっと楽しく学んでいけそうなプログラムですね。
松村 もう絶対に楽しいし、やっぱり学ぶうえで楽しいということがないと、自分が持っているものをなかなか出しきれないというか。そのへんを話し始めると長くなるからここではやめるけど(笑)、1週間でも2週間でも自分を違うところに置いて、新しい自分を発見する。そこがクリエイティビティのいちばん最初のきっかけかなと思います。
和泉 参加者のなかにはもしかすると英語が得意ではない方もいるかと思いますが、そのあたりはどうなんでしょうか?
松村 1日の大まかなスケジュールとしては、朝9:30からキャンプがスタートして夕方16:30くらいまでとなります。そのなかの9:30〜10:30くらいまで、ポートランド周辺で活躍しているアーティストやデザイナーたちに来てもらって、自分たちの作品を紹介してもらうことがひとつの英語の勉強になるよう、ESLという、英語を第2外国語として教えられるライセンスを持った英語の先生が一緒にディスカッションをリードしてくれる。日本であまり役に立たない英会話の勉強よりも実際に英語漬けにして、文法的な間違いということよりも中身で相手が言っていることをどれだけ聴き取れて、こっちが言うことの少しでも出せるか。そういうことを毎日午前中の1時間ぐらいやるし、PNCAの学生も参加してくれるということなので、先生も含めて個人的に話をするのがいちばん英語の勉強になるし、そんなに心配することはないと思います。日本人は英語の勉強を6年以上やっているから、書いたり読んだりはもうバッチリだし、あとは喋りながら慣れると。
和泉 コミュニケーションのなかで体験として獲得していけるようなことができればいいでしょうし、ちょっと言葉が通じないなかでの、人と人との本当の意味でのコミュニケーションとはどういうことなのかを体験するような機会になってもいいでしょうね。あとは手を動かすことを中心にしているので、英語が少しくらいできなくても、モノづくりをとおしていろいろな人とコミュニケーションしたり自分で考えを深めていくという体験もできるようになっていると思います。
松村 そこがすごく面白いところで、言葉が通じなくても絵を描けばだいたい考えていることはわかりあえるので、そういう面でも、普通の英語の勉強とは違うかたちでのコミュニケーションということで英語を勉強する良い機会だと思います。
和泉 今回は3週間のサマーキャンプ・プログラムということで、普通の旅行だと絶対に経験できないようなことや、その街に暮らしながら街を体験していくということがあると思うんですが、滞在する場所なんかはどういうふうに考えていけばいいですか?
松村 今いちばん注目を集めているエースホテルとか格好いいホテルが学校のすぐ傍にあるし、もう少し手頃なホテルもあるし、B&Bというスタイルの宿泊施設もある。または、何人かの人が集まってシェアするような、ちょっと大きめのアパートを借りてうまくシェアしあうということも考えられますね。
和泉 いろんなホテルを毎日泊まりながら体験してみるというのも面白いでしょうし、今回参加する人たち同士でFacebookのグループをつくっているので、そのなかで気の合う人と一緒に部屋をシェアするということもできますね。そこらへんも自由に自分たちで組み立てていける。
松村 1週間で何をやるかというのは、高校みたいに何かカリキュラムを組んで課題をあたえてやるというスタイルではないので、自分が何かやりたいことがあればそれを1週間のうちにどうやって組み立ててやっていこうかということでもいいと思うんです。たとえば、甘いものが好きとかパンが好きとかいう人は、ポートランドのこのへんはもう本当に美味しいパン屋さんとかペイストリーとかレストランがたくさんあるし、食に興味がある人は、そこを巡って何かレポートや自分のフードマップをつくるだけでもすごく面白いと思う。
和泉 ZINEをつくるのもいいですよね。そのような自分の課題を持ってきて、それを達成するような1週間にしてもいいということで、自分の興味と好奇心の赴くまま自由にいろいろ組み立てていけるようなプログラムになっていますね。
松村 何をしていいかわからないけど、何か魅力的そうだから参加したいという人もすごく大歓迎。そういう人って、何か次に行く機会なんだけど、どっちに行っていいかわからない。それを今の毎日の暮らしのなかで見つけようとするとなかなか大変なんだけど、ちょっと違う場所で違う言語のなかで違う食べ物を食べながら違う人たちと話をして1週間でもいると、ふと見えてきたりするものがあると思うんでね。自分を発見する、自分に確信が持てる、そういうきっかけがいっぱいあると思います。
松村要二
クランブルックアカデミーオブアート、バージニアカモンウェルス大学院卒業。1985年以降、日本、アメリカ、韓国、香港の大学にて、生徒それぞれのクリエイティビティとセレンディピティ(思わぬものを偶然に発見する力)を高めることを軸にアートとデザインを教える。http://www.imadoworks.com/yojimatsumura/
Summer Camp for Creativity in Portland at PNCA
2013.7.21 SUN – 8.11 SUN
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