講義レポート

「捨てる」ことで生まれるもの

「伝わる文章学」3期 講義レポート

こんにちは、「伝わる文章学」キュレーターの武石綾子です。
3期卒業生の早坂一王さんより講義レポートが届いたのでご紹介いたします。

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プロのライターとは文章をどのように考え、どのように文章を書くのであろうか。文章をうまく書けるようになりたいという思いで受講した「伝わる文章学」は、鈴木収春教授が独特の和やかな雰囲気の中で熱弁を振るう講義が魅力である。

その「伝わる文章学」第3期第3回は、太宰治研究家であり、小説・エッセイ・評論などの文筆業でも活躍される木村綾子さんをゲストに迎えて行われた。太宰治の記事を書くことを想定し、木村さん自身が普段行っている情報収集と整理の方法を実演してもらいながら学ぶという内容だ。

まず、対象人物が生まれてから亡くなるまでの出来事や、自分自身や世の中の人が持っているイメージなどを思いつくままドンドン書き出していく。さらに、情報と情報のつながりを書き加えていくことで太宰治の像を浮かび上がらせる。黒板全体に書き出されたマトリックスと細目は、それだけで太宰治という人物が手に取るように分かるかのような情報量であった。

しかし、これだけでは文章にまとまらない。文章を読むターゲットを想定して話の切り口を考え、書き出した情報を元に使える情報をまとめていく。

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情報をまとめるということは、大量の情報の中から情報を削り、圧縮することなのだ。冷静に考えてみれば当たり前なのだが、まとめるという作業は情報量を減らす代わりに価値の高い情報を残すことである。そう、情報量は減るのだ。

つまり、文章をまとめるということは情報を捨てることでもある。これに気が付いたときは目が覚める思いであった。文章を書くということに関して、何か霧が晴れたような気がした。

普段文章で何かを伝えたいと思った時、私はいつもいかに多くのことを伝えようかと考えてしまっていた。そのため、どんどん長い文章になってしまい、ついには何を伝えたいのか分からなくなってしまいがちであった。

情報を捨てることで伝わりやすい文章になり、文章としてのクオリティが上がるとはまさに目から鱗である。今まで私がやっていたこととは逆のことが必要だった。そう、「捨てる」ことで生まれるものがあるのだ。



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