講義レポート

津軽三味線はアフリカリズムと相性が良い

「旅学」講義レポート

地球リズム学アシスタントの吉澤裕樹さんより講義レポートが届きました。


世界中の民俗音楽を聴いて、視て、地球の鼓動を感じようという地球リズム学。実際にリズムを奏でて、五感をフルに活用し体感していく講義です。第3回目は、津軽三味線奏者の寂空さんをゲストに招き、日本の原風景そしてルーツを深く感じさせる音色を楽しむとともに、津軽民謡の掛け合いを全員で行い、リズムとグルーヴを体感しました。
地球リズム学image_2.jpgのサムネール画像
寂空さんは、静岡生まれ、湘南育ちながら、20歳の頃、三味線プレイヤー 上妻宏光さんの音楽をラジオで耳にし、津軽三味線の世界に目醒めたそうです。津軽出身でない寂空さんですが、津軽の歴史や津軽三味線の伝統に造詣が深く、津軽三味線に傾倒している姿がとても印象的でした。2011年に行われた第30回津軽三味線全国大会B級において、準チャンピオンになられた実力者でもあります。


津軽三味線のルーツは中国の三弦にあり、三弦が琉球に伝わって琉球三線となり、本土に伝わって三味線になったそうです。三味線に「さわり」と呼ばれる調音機能がありますが、これはインドのシタールが持つ「ジャワリ」と呼ばれる機能と語音が似ており、さらに辿ると、三味線のルーツはエジプトや中近東にまでつながっていると考えられるそうです。音を変え、形を変えて、リズムは脈々とつながっていく。なるほど、津軽三味線がアフリカリズムと相性が良いのは、単に力強さが似ているだけでなく、そのルーツにあるのかもしれません。
津軽三味線の演奏ではバチを用いて、弦をはじくような非常に力強い音が聴かれます。これは門付けと呼ばれる、 金品をもらい受けるために人家の門前に立って音曲を奏す行為の影響が大きいようです。室内まで音を届けるためには力強さが必要だった。かつて津軽で三味線弾きになる人は、盲目の方が多く、差別扱いされ、門付けのような習わしがあったようです。その話からしても、津軽三味線の歴史には暗い部分があります。しかし、特殊な環境は独自の文化を育みます。盲目な方々が演奏する音楽に、楽譜はありません。音楽は即興で奏でられ、口伝により継承されていきます。この即興が、津軽独自のリズム・グルーヴを生み出しました。音がうねっている。激しいなかにやわらかい音がある。
今や海外でも評価される津軽三味線は、他にはない独自の音を創り出しているのです。楽器にも独自性があります。端から端まで仕切りなく通っている弦では、微分音と呼ばれるきめこまかい音程を表現することができ、音に情緒が生まれます。同じ弦楽器のギターは、フレットで音階が仕切られているため、微分音を表現するには適しません。さわりと呼ばれる仕組みでは、弦を振動させ倍音を奏でることができますし、音澄(ねすみ)と呼ばれる技では、弦の振動をおさえてやわらかい音を奏でることができます。津軽三味線は弦楽器なのに打楽器っぽい、なんとも不思議な魅力にあふれています。
講義のなかでの印象的な話。ピアノは音階が 81しかないのに対し、津軽三味線には無限の音がある。無限の音は、日本人の根底に流れる感性のひとつ。こおろぎの鳴き声に風情を感じる日本人と、雑音に聞こえる西洋人。津軽三味線は、日本のルーツミュージックと言えそうです。一方で楽器は、本をたどれば、中近東から流れ変化してきたものであった。津軽のリズムは、根っこのどこかで世界とつながっている。日本人の感性も、根っこは世界とつながっているかもしれません。
講義のなかで、津軽五大民謡のうち「じょんがら節」と「よされ節」の演奏を聴きました。寂空さんの全身からあふれ出るグルーヴ感を目の当たりにし、血が沸き立つような、身体のなかから突き動かされる鼓動を感じて、まるで自分んみパワーがみなぎってくるようです。このような体感は、実は日常の生活のなかに転がっているとの話もありました。他の音楽や、伝統芸能、祭りなど・・・日常の生活で敏感になることが大事である、と考えさせられました。
次回12/8(木)は、本講義の教授であるSUGEEの西アフリカで学んだ太鼓と唄をききながら、地球上の音楽全てに共通した呼吸とリズムを学び、伝統音楽とポップスの相関関係について学び感じていきます。世界のリズムがどこかでつながっていることを、あらためて実感することができそうですね。


[講義データ]
地球リズム学
木曜日 19:30 – 21:00 11/17, 11/24, 12/1, 12/8, 12/15(全5回)
【単発聴講制度 適用講義】
本講義は全5回のうちお好きな回の聴講が可能です 聴講料:10,000円/回(当日現金払い)
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