講義レポート

地球リズム学アシスタントの吉澤裕樹さんより講義レポートが届きました。


世界中の民俗音楽を聴いて、視て、地球の鼓動を感じようという地球リズム学。実際にリズムを奏でて、五感をフルに活用し体感していく講義です。
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第5回は、本講義のメイン教授であるSUGEEが、生演奏を織り交ぜながら、世界中のリズムとグルーヴをレクチャーし、各地の文化・音楽の特徴や共通性について学びました。講義途中から、第2回のゲスト講師 大山ハジメさんが飛び入り参加し、教室の備品を使った即興演奏、最後には卒業セッションと、さまざまなリズムを堪能しました。

前回までの講義にて。キューバ、ニューオリンズ、津軽、西アフリカと、固有のリズムを体感し、それらが根っこではつながっていることを学びました。今回は、祭りと音楽の相関関係という視点で、リズムの持つ意味について探りました。

沖縄 久高島。本島東南端に位置する知念岬の東海上にある小さな島。かつては、琉球神話聖地の島として、本島の王様が毎年久高に訪れていた地です。ここでは、琉球王朝に作られた神女組織「祝女(ノロ)」制度を継承し、12年に一度、午の年に行われる祭礼・イザイホーと呼ばれる祭礼が行われていました。島の30歳から41歳までの女性がナンチュという地位になるための儀礼で、これによって一人前の女性として認められるというものです。祭礼ではさまざまな踊りや神唄が存在し、場面ごとに繰り広げられます。それぞれが重要な意味を持ち、祭礼を執り行うために必要なリズムです。古来より、リズムは人の祈りや信仰と強く結びついてきました。そこには人間が自然を崇拝し、感謝する気持ちが多分に表れています。
音楽とは、踊りとは、リズムとは。人間が自然とのつながりを意識し、共生していることを感じさせてくれる手段と言えましょう。久高島のイザイホーは、女性が島外に出て行ってしまうために後継者不足となり、1978年に行われた後、1990年、2002年は行われていない状況です。存続の危機にさらされていると言えます。しかしながら、イザイホーとは別の祭りは残っています。若い女性の唄い手が、ものすごい存在感のある声を発し、自然と対峙しているそうです。形はうつろえど、自然と共生する知恵脈々と流れている。久高島は、音楽の根源を感じさせてくれる場所です。
講義のなかでの印象的な話。久高島で有名なイラブー(ウミヘビ)の燻製技術は、モルディブの技術が起源と言われています。久高のウミンチュは航海技術が高く、遠くインド洋まで繰り出して、技術を持ち帰ってきたのです。それが、日本の本土に伝わって花がつおに形を変えたとのこと。燻製技術もつながっている、そして琉球がつなぎ役として重要な役割を果たしていたことが分かります。音楽と同様に。
講義終盤は魅惑のライブ。スティックひとつで乗り込んできた大山さんが、教室内をもぞもぞ捜索しはじます。並べたのは、机2つに椅子、ワイングラス。これでどんな音が出せるのだろう?という私たちの想像は、見事に打ち砕かれました。SUGEE氏のジャンベに大山さんのドラムワーク、本当にスゴかったです。アフリカ、中近東、インド…さまざまなリズムが流れるように繰り広げられ、心に響きます。あとで聴くに、奏でられたリズムは3連符、心臓の鼓動と同じだそうです。これぞハートビート。いつも聴こえる音なのに、なぜか新鮮に感じます。今の世の中、機械の音があふれているからでしょうか。
大山さんの言葉。「機械は呼吸しない。機械が人間に近づこうとしている。人間の微妙な感覚をを表現するかのように。」ますます生の音に触れたくなりました。全5回それぞれに、知識として、体感としての気づきがありました。地球リズム学はこれにて一旦終了しますが、次なる展開が楽しみです。


[講義データ]
地球リズム学
木曜日 19:30 – 21:00 11/17, 11/24, 12/1, 12/8, 12/15(全5回)



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