講義レポート

ポートランドの環境がクリエイティビティを刺激するーweek1レポート

Summer Camp for Creativity in Portland at PNCA(week1)

こんにちは、キュレーターの岡島です。「Creative Camp in Portland at PNCA」の1週目に参加をしてきました。Pacific Northwest College of Art(PNCA)はオレゴン州ポートランドにある美術学校。ポートランドがクリエイティブシティと言われるまでになった1つの要因に挙げられています。プログラムディレクターの松村要二さんのもと、自ら問題設定をし、クリエイティブな試行錯誤をしながら解決することを体験するプログラムです。

ポートランドサマーキャンプ

社会と繋がりを感じる学びの場
7月21日にキャンプの初日を迎えました。PNCAのトム・マンレイ学長による歓迎のあいさつの後、校舎内をツアーし、生徒がどのような環境で学んでいるのか説明して下さいました。待ち合わせ場所だった校内のフロアは学生のロビーであったり、ライブをやったり、卒業制作のプレゼンテーションをする多目的な空間。すぐ隣の部屋はギャラリーになっており、生徒の作品展が常時開催されています。近所を散歩している人がふらっと校舎に立ち寄り、学生とコミュニケーションを取ることもしばしば。多様な人と交流しやすい環境にあるため、思いもよらない質問をされて返答に悩むこともあるそうですが、差異から生まれたインスピレーションを作品に仕上げ、自分のクリエイティビティを社会に還元しようとする姿勢を感じました。

 ポートランドサマーキャンプ

とにかく形にしよう! そこから全てがはじまる
1週目はアート+クラフトがテーマ。石版、木版、活版、銅版、シルクスクリーンなど印刷技術の歴史を全て網羅しているほどの道具が揃ったアトリエで授業がスタートしました。葉書大くらいのピカピカ光る銅版を渡され「1時間半内でポートランドに来てインスピレーションを受けたことを彫ってください」という課題が出されました。いきなりのお題に面食らう人がほとんど。しかも銅版なんて彫ったことないし、間違えた線は消せないし、絵心なんてないし…。

いろいろな不安が過ぎる中、街に飛び出してインスピレーションのかけらを探します。プリントクラスを担当して下さる先生は、日本語を忘れてしまった大阪出身のヨシさん。街に散らばった1人1人を見つけ出し、どんなことを形にしたいのか相談に応じてくれます。もちろん英語でコミュニケーションを取ります。そして約束の時間にアトリエに戻り、自分の作品について1人ずつ説明をします。PNCAの生徒であるセリンさんとジャスティンさんも表現方法や、考えを深めるための意見を言ってくれました。風景や心象を絵にする人、特徴を捉えてアイコン化する人、銅板を足に巻き付けて歩き、道の記憶を銅板に刻みつける人…。上手い、ヘタではなく個人の表現を伸ばすような示唆がもらえ、緊張していたキャンプメンバーの表情に笑顔がこぼれました。

ポートランド

 

自由に表現する気持ちよさを味わう
パソコンで何でもできる時代ですが、手仕事で培った感覚は身体的な納得感があります。同じ版にインクを乗せて刷っても2度と同じプリントは存在しないから、そこに至るまでの時間に価値を見いだす。アナログな作業にこそ人間に備わっている感覚が発揮できることを改めて気づかされました。

月曜にスタートしたプログラムは金曜に最終日を迎えます。最後はキャンプメンバーが作った全ての作品を見せ合いました。そして初日の作品からどのように変化したのか、その経緯を語りながらのセッション。意見を交わすことでその人の新しい側面が見えたり,魅力を引き出されたり、言葉や絵を通じて自分自身を表現することを楽しみました。情報を得るだけで満足しない。とにかく自分なりに手を動かしてやってみることの大切さを学びました。It’s up to you!



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