講義レポート

空を見る人だけが虹に気づける

URBAN HIPPY TIME 第1回 ゲスト:長谷川踏太(クリエイティブ・ディレクター )


URBAN HIPPY TIME #1「タイミング」

2月23日に初開講した URBAN HIPPY TIME

次世代クリエイターのための哲学対話。ジャンルを問わず、つくり表現する同志たちが抱えるさまざまな「問い」について、教授のK.A.N.T.A さんを中心に毎回変わるゲストと自由大学学長 深井次郎が考えを深めていきます。ひとつの答えを出したり、正解を教えたりするわけではありません。各々の考えや経験に基づいて対話を繰り広げます。

2月のテーマは「タイミング」

1週間前の告知に関わらず満席、20名の参加者で教室がいっぱいになりました。この場に参加できたのもひとつの「タイミング」です。辞める、始める、メンターと出会う、作品を世に出す、作家と名乗る、独立する、結婚する、拠点を定める… ベストなタイミングは存在するのでしょうか。 社会の流れに合わせるか、自分の行きたいタイミングで行くか、などみんなはどうしているのか話し合いました。

URBAN HIPPY TIMEは無料で開催されます。この時間は具体的な「制作スキル」を教えるのではありません。軽視されがちだけど実は重要な「マインド面」を掘り下げます。自分がこれまでの経験や、多くの先人から無料で与えられた知識を他の人に渡す時間なのです。

ゲストにクリエイティブディレクターの長谷川踏太さんを迎え、タイミングについて参加者を交えながら対話をおこないました。2019年9月で「ワイデン+ケネディトウキョウ」のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターという要職を離れ、新たな道を歩み始めました。なぜそのタイミングだったのか。会社を辞めるか、辞めるならいつか、という重要なタイミングはどのように決めるのか。あなたならどうですか。


K.A.N.T.A さん

タイミングを意識する重要性

今回、最初のテーマをなぜ「タイミング」にしたかと言えば、「なんとかなるタイミング」に自分を入れていく必要があるな、リズムに入る必要があるなと気づいたから。それは自然にできるものではないので、どう自分を「グッドタイミング」にもっていくのか考えていきたいなと思っています。

グッドタイミングになるかバッドタイミングになるかは自分のコンディションに影響されます。いい縁ができる時はリラックスしているものだし、怒りが溢れている時は会いたくない人に遭遇しちゃう。いいタイミングを掴むには、コンディションを研ぎ澄ますことが必要だと考えています。自分の感情の変化、悲しい、嬉しい、感動していることを意識すること。

ただ、僕にとってはいいタイミングのことが、同じ場にいる他の人にとってはそうでないこともあります。コンディションの違いや、見る角度、ポジションで受け取り方は変わるんですね。こういうギャップを「しょうがないよね」と諦めるのではなく、自分のちょっとした気遣いで相手にもグッドタイミングにできると思っています。


タイミングは「いい人」にやってくる

タイミングを掴むなら、結論として「いい人でいる」ことが大切だと思います。いい人でいればいい人と出会えるし、いいタイミングも訪れる。

アーティストとして稼ぐために必要なことは「人間性」です。今は音楽で食べていますが、稼げなかった時期と作っているものは変わらないんです。稼げなかった理由は僕の人間性で、稼げるようになったのは僕自身が変わったから。

仕事がくるとき、自分の力でどうにかなる部分は10%ぐらいしかないんです。例えば誰かが「そうだ、この仕事はK.A.N.T.Aに任せてみよう」と思いついてくれて、それが僕のいない会議室で承認される。その場でもう僕は努力のしようがなくて、会議室で決断される前に、僕が評価してくれる人と出会えていたかどうかで決まります。

だから「任せるよ!」って言ってもらえるように、普段からいい人でいなくちゃいけないと思います。

 


タイミングを意識する重要性

今日来てもらった踏太さんは僕が尊敬していて、メンターでもある人です。

稼げなかった頃、踏太さんに「今のままではお金が稼げないよ」ってさらっと言われたことがあるんです。当時は意味がわからなかったけど、5、6年経ったときに、「自分はお金に固執しすぎていたな」と気づきました。

お金を有効に使う方法がわかってなかった。もし当時お金を得ていたとしても無駄にしていたと思います。

お金がいくらもらえるかに関わらず、自分のコンディションは一定じゃないといけないと考えています。そのために自分の感覚を研ぎ澄ます必要があります。タイミングを掴むためには、自分のスタンスを変えないことが大切。


長谷川踏太さん

タイミングはやってくるもの

あまりタイミングを自分で考えたことはなくて。大学、大学院をロンドンで過ごしましたが、それは「高校を卒業して大学に入る」というタイミングだったから、留学しようと決めた結果です。

日本に帰国してソニーで3年ほど働いたあとに、ロンドンに戻ってトマトというクリエイティブ集団で10年ほど活動しました。帰国後はワイデン&ケネディで日本代表を務め昨年独立したわけですが、ぜんぶ「就職どうしよう」とか、「何歳になったからどうしよう」と訪れたタイミングに受動的に対応してきたように思います。

今がタイミングだと感じるとき

昨年会社を辞めたことにも繋がりますけど、「一周回ったな」と感じると次を探しに行こうというタイミングかもしれないですね。広告業界が長いですが、今まで走ったところじゃないところを走ろうかなと思っています。

チャンスを掴むコツ

グッドタイミングはつまりチャンスだと思いますが、それを見つけるにも訓練が必要です。

「これはチャンスだ、いいタイミングだ」ってわかるのは、自分の求めるものがわかっているから。そうでない人は、漠然とタイミングを見過ごしていたり、重要性がわからないのかもしれません。

タイミングが来た、自分は正しい道を歩いているんだって確認作業は、多くの人にとって意識しないとできないと思います。チャンスは意識的にならないと掴めないんですよね。


タイミングに気づいて活かすには

チャンスは偶然をどう切り取るかでもあると思っています。たとえば「劇的なタイミングで虹が出た、奇跡だ」とか体験することがあるけど、虹ってものすごくよく出るんですって。でも、ほとんど気づかない。自分が空を見る動機があったから、虹に気づけるんですね。だから、理由がなくても空を見て虹を探すようなことが大事なんじゃないかと思います。

誰にでも何回も訪れるタイミングでも、その時の自分にとって意味のあることになるかもしれない。平凡な日々のなかで、なにかにフォーカスすることは大切だと思います。

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それぞれの「タイミング」について、体験や考えを共有し合う時間となりました。

 


URBAN HIPPY TIMEはこれからも月1ペースで開講を予定しています。
第2回はオンラインで開講しました。ぜひどんな雰囲気か、感じてみてください。

 

ノーカット動画(限定公開)

次回の日程など詳細はこちら

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