講義レポート

創造性をワクワクと開いていく

「DIYミュージック」第14期講義レポート

自分でも音楽を作ってみたいーーそう思ったことがある人は多いのではないでしょうか。

「DIYミュージック」は、そんな思いを叶えられるかもしれない、自由でワクワクする講義です。音の彫刻家にしてシグナル錬金術師のsawako教授のもと、様々なバックグラウンドの受講生が集い、2018年1月期で14期を迎えました。

スマホやパソコンの音楽ソフトを使っての音楽制作方法の紹介や、フィールドレコーディングと称して身近な音を1分間録音してくる課題がある回もあります。しかし、究極にはアプローチもゴールも言わばまったく自由。何を目指しどんな音楽をつくるのか、それは受講者ひとりひとりの創造性次第でもあるのです。

14期の第4回となった2018年2月15日の回は、山梨を中心に活動するBig Benさん(日本人男性)をゲストにお迎えして、レクチャーや実演などがおこなわれました。Big Benさんは、stillichimiya(スティル一宮)というヒップホップチームの一員。そもそもは、2004年ごろ、山梨県東八代郡一宮町が、ほかの町村と合併することになった時、それに反対するために地元の仲間たちが音楽活動を始めたということに由来するそうです。そのメンバーのひとり、田我流(でんがりゅう)さんも、日本のヒップホップシーンで有名な存在です。

一時期はメンバーが上京してクラブなどで活動していた時期もあったそうですが、今はメンバーの多くは地元山梨に戻り、地域でヒップホップ活動を続けているそうです。そう言えば、県民性についての学説の中で、山梨出身者は、東京に出てきたあとも同郷出身者とのつながりが強い、という指摘があったのを個人的には思い起こしました…

stillichimiyaの代表曲には「ズンドコ節」「やべ~勢いですげー盛り上がる」などがあり、授業の中でも紹介してくださいました。Big Benさんご自身は、ブッダブランドなどにも影響を受けたと仰っていましたが、中部〜甲信越地方のレペゼン感と、5MCのマイクリレーは、nobodyknows+などを思い起こさせるトーンもあり、また日本のお祭り囃子の現代的な姿を見るようでもあり、たいへん楽しい世界が展開していました。

Big Benさんは、丁寧な資料もご用意してくださり、レコーディング時の機材構成、手書きのラップ詩作メモなども知ることができました。ラップの1ヴァースは16小節を基準にすることが多いこと、自分のことをラップしているだけではネタが尽きてくる時に、仲間と共同制作していることは大きな助けとなること、なども教えていただきました。実演として、トラックを流しながらのラップだけでなく、アコースティック・ギターによる弾き語りも披露していただき、たいへん充実した回となりました。受講生が制作中のデモソングなども皆で聞き、Big Benさんからもコメントをいただきました。

毎回、いちおう時間割としては19:30-21:00のワクなのですが、いつも遅くまでディスカッションは続きます。話は、現代の音楽だけでなく、現代美術や、イベント化する町おこしの現状などにも及びます。sawako先生は、幼少期から能楽も学び、ニューヨークのアバンギャルドなシーンも体験されたそうです。そんなsawako先生を囲むサロンのような時間が展開してゆくのも、この講座の魅力かもしれません。話のゆくえが少しわからなくなりそうな時も、キュレーター・鈴木絵美里さんによる絶妙な合いの手が入り、会話はいつでも楽しく展開してゆきます。

この第4回では「ゲスト生徒」として、以前ゲスト講師としていらっしゃったこともある、ほのぼのエレクトロニカ・ユニット Her Ghost Friendのお二人も参加し、いろいろなアイディアもいただきました。そんなHGFも参加したDIYミュージックのコンピレーションは、2017年7月にリリースされ、これまでの卒業生やゲストの作品26曲を収録し、iTune Store・Apple Music・Spotifyなどでも公開されています。

(text:第14期卒業生 コイケヤスシ)



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