講義レポート

仕事を探すとつくる

「U29で仕事をつくろう」キュレーターコラム

「将来何になりたいの?」「将来どの業界や会社で働きたいの?」と先生や色々な大人が子供たちや学生に尋ねる。それを見ていて不思議だった。今の世の中で存在している職業も業界も会社も変化していくもの。本来じっくりと向き合うべき部分を見失ってしまっているのでは?いつしかそんな疑問を抱くようになっていた。

ひとりひとりが、自分が問いや興味を持って夢中になっていることに対して、「なぜそういう疑問を持っているのか」や「なぜ好きなのか」を幼い頃から日々の中で表現し合ったり、表面上では知ることのできないお互いの思想にふれて対話を重ねていくような文化が日本にはあまりないように感じる。4年前、在籍している大学で「恋する学問」という新たな講義をつくり始めたのも、そして今こうして自由大学で活動しているのも、そんな小さな「?」の連続から始まった。

ものが足りず、とにかくつくる人手が必要だった時代では、決められた枠の中で効率化して仕事をそつなくこなす力が求められていただろう。ところが、今は必ずしもそこが重視される時代ではない。効率化は、AIの普及でロボットと組んでやっていくことで進むだろうし、人間はある意味いま、「本当に何に問いや興味を持って探求していきたいのか」と、本質をもう一度考えていくチャンスなのだ。

「心地いいな」「美しいな」と、幸せを感じる瞬間があったり、心が躍ったり。もう少し毎日を素の自分で生きられるような空気感があってもいいのでは?とも思う。社会人や学生である前に、みんなひとりの人間。自分の心がなんと言っているのか耳を傾け、「なぜだろう?」と感じることに向き合う。「いいなと感じて描いている風景と今のギャップは何だろう?さて、そのために自分はどんなアクションを起こそう?」と、ふと立ち止まって考える時間をつくってみてもよいのではないだろうか。

U29で仕事をつくろうでは、「仕事を探すのでなく、つくる」ことを考えていく。あえてU29としているのは、10代20代にも自由大学は開けている場所だと改めて知ってほしいと思ったから。これからの時代は、組織に属していようがいまいが、自立した個人として歩んでいくことになるだろう。肩書きや年齢などに囚われず、どんな問いを持ってどんな探求をしているのか、さらに、違う得意を持った人たちとチームとなって協奏していく。競争ではなく、協奏だ。

かくいう私もU29(29歳以下)のひとり。仕事をつくり、経験しながら考え続けるスタンスで歩み始めているところ。2017年の終わりに、新しい年を迎える前に、今回はどんな皆さんと出会えるのだろうかとワクワクしている。

(text: U29で仕事をつくろう キュレーター 篠原梨沙)



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