講義レポート

競争心ではなく協創心

「Creative Camp in ポートランド2016」参加者レポート

今年も行ってきました「Creative Camp in ポートランド2016」。今回レポートを書いてくれた小菅亜実さんは、ポートランドが豊かと言われる要素を自分の目で確かめて、体感したいと思い参加したとのこと。キャンプでのヒントがどう彼女の仕事観へ影響を及ぼしていったのでしょう。
ーーーー

私は今家業を継いで地域密着型の工務店の4代目を修行中だが、仕事を継いだ理由も工務店そのものに特別興味があったわけではない。「住」という大きなカテゴリーに属する建築という分野は、物質的に「家」という安全で安心な場所をつくるだけでなく、まちの暮らしを豊かにできるのではないかと思ったからでもある。

入社してから4年半、これからの家づくりを重点的に模索してきたが、幸せな暮らしとは、個人的にどうも結びつかなかった。一度、工務店のあり方を模索することから一歩引いて幸せな暮らし方に焦点を合わせてみようと思っている最中に、自由大学のポートランドクリエイティブキャンプを知った。元々ポートランドのことは以前から「住みやすさ」の点で興味があり、その時点で行く気は満々だったが、PDCの山崎さんのイベントに参加してポートランド行きを即決した。

img_2278

いろんなバックグランド持つ仲間たちとディスカッションをし、企業を見学し、まちの人と直接対話し、その空気を味わい感じたものは行く前の私の予想をはるかに超えていた。アメリカという「Liberty」を基盤にした国で、更に自由を求めて移動してきた西側のリベラルな精神が人として生きやすい社会環境を生み出している。また、ものとものづくりを大切にするクラフトマンシップがすべてのポートランダ―に根付いている。結果として、人生や生活を本気で楽しむ人が集まってくるクリエイティブな都市がポートランドなのだろうと。これがポートランドはなぜ豊かなのか?に対する今回の旅での私の大雑把な答えだ。

img_3230

実際肌で感じた点といえば、みんなポートランドが好きで誇りに思っているということ。ただの地元愛ではない。自分たちで自分たちの暮らしを創造していることに対してだろうと推測する。そして会社の利益を重視した「競争心」がないことに対してもそうだ。こんな言葉は日本語にはないが、彼らにあるのは「協創心」ではないかと強く思う。肩書や年齢、性別でグループやコミュニティを作ってしまうのではなく、自分らしい生き方をする人をまちが協力し応援する。そしてポートランドというまちが一つのコミュニティなのだろうと感じた。ここまで書くと、とんだ理想郷のように感じるが、彼らはそれをあたかも当たり前のように、多様性を受け入れ生活している。そんな場所がこの地球上でまさかアメリカにあるとは思ってもいなかったことだった。

img_2644

今回の旅で得た学びや気づきは、これからの日本での生活や仕事への一つの指針としてその本質を今後さらに考えていきたいと思う。同時にものづくりの観点から工務店としても、そして新たなビジネスを始めるとしても、まちというコミュニティを形成できるような仕組み作りに取り組みたいと思う。



関連する講義


関連するレポート