講義レポート

自分の心に従って、道を切り拓くこと

「CREATIVE CAMP in ポートランド 2014」参加者レポート

今年の夏で3回目を迎える「Creative Camp in ポートランド」。昨年は43名の参加があり、キャンプ受けた刺激を、帰国後に花開かせている人たちがいます。今回ご紹介するレポートを書いてくれた三浦伸太郎さんは、中日ドラゴンズファンで名古屋から参加。雑誌のPOPEYEのポートランド特集とTRUE PORTLANDを常に2冊持ち歩き、話題のスポットを巡礼していました。でも、その中で一番感銘を受けたのは、日本では知られていなかった個人経営のブルワリーでした。

自分の心に従って、道を切り拓くこと

私にとって今回のSUMMER CAMPで最も心に残ったのは、Mikeとの出会いだった。NIKEの本社、KINFOLK、Wieden+Kennedyをはじめ、様々な魅力的な場所にも訪問できて大満足のプログラムとなったが、Work LabでTHE COMMONS BREWERY(以下、COMMONS)を訪れて創業者のMikeに話を聞けたことが一番の収穫となった。

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Kinfolk Magazineにてネイサンと

Mikeは、労働条件の良いIT企業に勤めていた人物だった。条件の良いキャリアであったが、興味が失せて来たそうだ。彼は、家も車も家族もあったので、すぐには会社を辞めずに、自家醸造のライセンスを取るためガレージでつくり始めた。州から許可証をもらえれば販売を始められるのだが、つくり始めてとても楽しみになったマイクはビールづくりを突き詰めて行ったそうだ。私も、日本で公認会計士として大手監査法人に勤務して6月で卒業し、7月に会社を設立したばかりの時期であったこともあり、冒頭からMikeの話は自分と通ずるところがあると感じ、すぐに引き込まれていった。

同じように退職して起業する人でも、それまで築き上げたものが大きい人の方が失うものが大きいというのは事実としてあると思う。自分も、資格を使わずに他のことに挑戦するのはもったいないとよく言われる。人生80年のうち2年半もかけて取得した資格(一度、論文試験で落ちてしまったので)を利用する機会が減ることに対して後ろ髪をひかれることはあるが、今後の意思決定が過去の資格取得に要した様々なコストに引きずられるのは賢い選択だとは自分は思わないし、そうしたくはないと思って決断した経緯がある。一方で、ビジネスの世界で他の人よりも認められて来た人は、逆にマインドや行動等の面で相対的に優れており、自分が好きな他のことをやっても成功する可能性が高く、飛び込んだ業界で新しい波を起こせる可能性も高いであろう人だから、私はそういう人が挑戦しないことの方がもったいないという側面も強く感じていた。そして、Mikeと出会い、それは確信に変わって行った。

Mikeは穏やかに、かつ、誠実に、言葉を選びながら素直な気持ちを話してくれた。設備にお金がかかる産業であり、資金調達が一番大変だったそうで、「リース契約で始めることはできなかったのか?」と尋ねたら、「それは良い。アメリカではそんなのはないが、君が醸造に必要な設備をリースする商売をしてみたらどうだい?」と返してくれた。そんな知性とユーモアを兼ね備えたMikeが話してくれた中で、特に心に残ったものを以下に要約した。

1)IPAはホップが強いが、嫌いなわけではない。COMMONSは業界のルーキーだから真っ向勝負ではなく独自色を出して勝負することを選んだ。
2)もっと規模の大きいブルワリーでは、よりオートメーション化されているが、COMMONSでは、手動の工程が多くて工夫を加えやすい。そこに喜びを感じている。
3)会社を辞めても良いかなと思ったが、完全には自信がない中で決断した。ガレージでつくったものを販売している中で、規模・販売量が増えて来て、人を1人雇うか、または、自分がサラリーマンをやめて専念するのかを考えたら、自分でやるのが自然だと考えた。
4)正直に言うと、最初は怖かった。今でも怖い。飛行機が落ちることだってあるのだから。
5)関連する雑作業だって、ビールを作るということだ。
6)仕事のやりがいは、自由があり、クリエイティブな人たちと仕事できることだ。持っているパッションも共有できる。オートメーションじゃないから楽しい。
7)結局、美味しいビールをつくらなければならない。逆にテイストが良ければ大丈夫だ。
8)わかる人に聞けば勉強しなくてもできる。同じブルワリー業界の人が教えてくれたおかげで今がある。
9)ポートランド自体協力的であるが、この業界ではとりわけ皆が協力的だった。同じレシピを教えても同じものはできないと思う。
10)美味しいビールをつくるために必要なものは全部やる。他の食べ物、飲み物を感じたり、原材料に拘ったり、アート・音楽・旅行等からインスパイアされたりする。
11)スタッフの半分は音楽をしている人たち(倉庫の上にドラムセットが置いてあった!)で、顧客もクリエイティブな人たちなのが嬉しい。
12)人々が望んでいて、育っていると感じる(自分の事業が)。オレゴンビールにみんな飽きて来ている。
13)これで一山当てようと思っていなかったし、金が欲しいとも思っていなかった。楽しいことをやりたい、働き方を変えたいという想いで始めた。
14)自分のところの従業員が、仕事が終わった後に笑っていて欲しい。Happyな従業員が来てくれればよいものができると思っている。
15) 自分で情熱を感じるものを見つけたら追いかけた方が良い。やっても後悔はしない。
16)集中力を保つこと。PassionとGoalから目を離さないで!
17) 成功するために変更することを恐れずに!
18)採用基準は、自分よりも頭がよいこと、自分よりも優れていることにしている。その人を励ましたり、力を与えたりする中で、彼らと共有し、理解して成長できるから。

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THE COMMONS BREWERのTシャツを着て

ポートランドサマーキャンプのおかげで、自分もMikeのような経営者になれるよう一層の精進に努めたいと感じた。間違いなく、自分史上最高の夏休みになったと思う。これから自社ビルを構えて事業拡大を目指すと語ってくれたMikeの挑戦に大きな期待を寄せつつ、自分もそれ以上に頑張っていくことでMikeに恩返しをしたい。そして、もう一度ポートランドでMikeと一緒にCOMMONSのビールを飲みたい。



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