講義レポート

星空の皿〜星座盤〜

星空コンシェルジュ入門 教授コラム

 1953年夏、私は埼玉県坂戸市に生まれました。現在の圏央道坂戸インターチェンジの近くです。当時は『埼玉県入間郡坂戸町』と呼ばれた地名から想像出来る通り、畑と田んぼに囲まれた田舎の村でした。星空に興味を持ち始めた約半世紀程前の夜空はかなり暗く、綺麗な星空が広がっていたのを覚えています。

中学入学前後から星空に興味を覚え、中1の夏休みに学校斡旋で購入した口径5cm屈折望遠鏡で,最初は月・惑星・二重星などの眼視観察に熱中していました。その後、2年先輩の影響で天体写真に手を染め始めてから、星空の世界に魅了されて行きました。望遠鏡も少し大きな口径7.6cm反射望遠鏡(ミザール光学)を買い、カメラもレンズ交換ができて安価な一眼レフカメラ『ペトリV6』を購入したりしました。これらの器材購入のため、牛乳配達のアルバイトにも励んだものです。

天体写真は、目では捉えられない淡い天体が画像として浮かび上がってくるのが嬉しくて、星空の魅力を一層強く感じるきっかけとなりました。写真の現像技術を独学で覚えてからは、夜は自然の暗室にもなるので、星を見たりDPE作業をしたりと、寝る暇を惜しむ程星浸りの毎日でした。現在ではDPE作業はPC処理に置き替ったものの、写真との付き合いは今も続いています。

その当時を振り返ってみると、星空を通して理科は自分の得意科目と思えるようになり、その後の高校受験以降は理数系を中心に人生を歩んできた様に思えます。社会人となってからも、星空はいつも身近にあり、自分の行動も星空に導かれて今日に至っています。常に変わらない星空には、ずっと見守られているような安心感があるので、日常生活にふと不安を感じるような時、私はいつも星空に自分の原点を探しました。

いまも私の手元には、古いブリキ製の星座早見盤があります。星空を見始めた頃、そっと私の背中を押す様に母が買ってくれた物です。今では星座アプリを使用してしまうため、これを利用する機会は無くなりました。でも、この星座盤を眺めていると、今では決して見ることの出来ない生れ故郷の星空と母の思い出が蘇ります。私にとってこの星座盤は、記憶を映す魔法の皿なのです。

(words  :丸山明)



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