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ウェブサイト、zine、マーケット。メディアを広くとらえてストーリーをつなぎたい

クリエイティブチーム・岩井謙介さんの「学び」

2015年12月5日と6日の2日間、国連大学前で「Nordic Lifestyle Market – a quiet day -」が開催されます。北欧のライフスタイルをテーマにした骨董品のマーケットです。その仕掛け人、クリエイティブチーム・岩井謙介さんの「学び」を聞きました。

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岩井謙介さん(キュレーター)
今も原動力になる自由大学で学んだこと

2011年、岩井さんは「なりたい自分になる方法」を模索していました。新卒入社から1年が経ち、2012年。大学時代にブックマークしていた自由大学のウェブサイトを見ると「クリエイティブ都市学-Stockholm」という講義を見つけます。

好きな北欧を学ぶことができる。自分の好奇心に自然体で応じて、岩井さんは初めて自由大学の講義を受講しました。「クリエイティブ都市学-Stockholm」では、各回ゲストスピーカーを招き、ストックホルムの魅力が語られていきました。

「いろんな視点で物事を見る。その大切さに気づきました」

続いて岩井さんは、チーフキュレーター・和泉里佳さんがキュレーションする「アメーバワークスタイル」を受講します。そこでも、さまざまな角度で働き方を学ぶ講義を体験し、自由大学の学びのおもしろさにのめり込んでいきました。

「いろんな切り口を組み合わせて、ひとつの講義をつくりあげることに魅力を感じました」

そんな岩井さんの大きな転機になったのは、3つ目に受講した講義。暮らし方冒険家・#heymeotoの二人が教授をした「#DIY実験室」です。当時、#heymeotoの伊藤菜衣子さんから聞いた言葉は、今も、岩井さんの原動力になっています。

「『やれると思ったら、やれるからやればいいんだよ』というようなことを言われたんです。やれると思った時点でそれはできることだから、あとはどうやっていけばいいかを考えるだけでいい。そこに不安はないでしょう。あとはやるだけだよ。そう言われて、本当にショックでした。考えたこともなかったので」

岩井さんはすぐTumblrでウェブサイトを立ち上げます。それが今も続く北欧ウェブマガジン「scandinavia181」の始まりでした。

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流れて消えない情報の届け方

2年間、「scandinavia181」を運営する中で、岩井さんはシナモンロールワークショップといった独自イベントにも取り組みました。それでも、ひとつの課題を意識せずにはいられなくなります。

「ウェブで公開している以上、どうしてもタイムラインのように記事を読まれてしまいます。どうにかして、流れていかないようにしたいと思いました」

2015年の元旦、お雑煮を食べたあと、岩井さんがふと閃いたことはzineづくりでした。

「2014年くらいから、国連大学前のFarmer’s Market@UNUの雑誌『NORAH』や自由大学学長の岡島悦代さんが編集に関わった書籍『TRUE PORTLAND』が出版されていて、小さなチームで出版活動をすることができる時代の雰囲気を感じていました。だから、ぼくにもできると思ったんです」

岩井さんは、北欧の文化とデザインをコンセプトにしたzine『The Utopia』を制作し、京都造形芸術大学外苑前キャンパスで2日間開催されたTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2015で販売します。もちろん、自信を持って。

「置いておけば、手にとってもらえると思っていました。ブースには北欧の骨董品を並べて、その空間だけ北欧のようにしていたし、自信を持って届けられるzineだと思っていたから。でも、初日はダメでしたね」

2日目に備えて、夜通しで用意したPOPが功を奏します。1日目と異なり、自分のzineを手に取り、買っていってくれる人が増える中で、岩井さんはあることを実感しました。

「いくら良いzineでも、どういうものかわからないと売れない。どういう人が、どういう思いで、なぜzineをつくっているのか。ちゃんと伝えてあげることが重要だと気づきました。ストーリーに共感して買ってくださる方が多かったんです」

岩井さんが届けたいストーリー

今週末、2015年12月5日と6日の2日間、岩井さんは国連大学前でFarmer’s Market@UNUと一緒に北欧のライフスタイルをテーマとした骨董品のマーケット「Nordic Lifestyle Market – a quiet day – 」を開催します。このマーケットは、岩井さんにとって集大成のイベントです。

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「マーケットで骨董品やアンティーク家具を買って帰る人は少ないかもしれません。でも、マーケットに訪れた後、出展者の店舗に足を運ぶ人が現れるように、販売する骨董品を通じて、ちゃんとストーリーを伝えていきたいです」

ただものを売るのではなく、ものを通じて見えてくる北欧の暮らしを伝えたい。それが岩井さんの思い。

「スウェーデンにルンドという小さな村があります。そこで出会ったデザイナーアシスタントの方が骨董品を集めることを趣味にしていたんですね。その方の自宅には、どれもその方の美意識で選ばれた骨董品が揃っていました。今までの日本は、お金をかけてラグジュアリーな暮らしをしたり、高級車に乗ることが豊かさにつながる文脈があったかもしれません。でも、もっと慎ましく、センスよく、個人の美意識を生かした暮らしをしていく文脈があってもいい。その一端を今回のマーケットから感じてもらえたら嬉しいです」

誰かを後押しするビジョン

2016年に向けて、岩井さんは次の一歩を踏み出しています。

「クリエイティブチームとして、年明けから自由大学の講義を本にする『自由大学出版』プロジェクトをスタートする予定です。いろんな講義の本づくりを進めていきたいと思っています」

この出版プロジェクトに関わる岩井さんのビジョンは?

「講義を受けた後『自分もできるかもしれない』と感じる人のように、講義を受けた後どうしようかと考えている人に『できるかもしれない』と思ってもらえるようなコンテンツにしたいですね。ぼくの原体験がそうであるように」

本のつくりかたにも特徴を持たせたいと続けます。

「各講義いろんな特徴があるので、卒業生と協力しながら進めていけないかと思っています。そして、クラウドファンディングを取り入れて、新しい出版の形を表現していきたいです」

ウェブサイト、zine、マーケット、そして出版プロジェクト。さまざまなメディアを通じて岩井さんが取り組む表現手法。それは情報編集です。

「ぼくがやりたいことは、情報の編集です。それは、zineならzineを、ウェブならウェブを編集するという、狭義の意味ではなくて、ウェブサイトやzine、マーケット、プロジェクト、全体を通じてストーリーを編む編集です」

広い編集を通じて、岩井さんが届けるストーリーとは?

「モノに関わる人や暮らし、作り手、購入した方のその後の暮らし。そんなモノを中心としてつながる数々のストーリーを届けたいと思っています」

ニュースを伝えるのではなく、暮らしの美意識や心地よさを編み上げて、新しい文化を届ける。そんな岩井さんの活動がどんなものなのか、まずは「Nordic Lifestyle Market – a quiet day -」に足を運んで、体験してみませんか?

(インタビュー全文を近日公開予定!)

 

★マーケットに出かけよう!
Nordic Lifestyle Market – a quiet day –

ライター/新井優佑



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