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ブリコラージュと自由

独立してやっていくのに一番必要なものは、ブリコラージュの精神だと思う。
ブリコラージュとは、その場にある素材をうまく組み合わせて必要なものをつくっていくこと。
わかりやすく料理でいうと、最高級の食材を仕入れてつくる高級レストランの料理ではなく、
家の冷蔵庫の「ありもの」からひねりだす家庭料理の方法だ。
大企業で長年つとめて独立した人の多くは、これがなかなかできない。
「なければないで、なんとかする」この発想である。


これは僕がつくばで小さな会社を営んでいたときの出来事だ。
事務所移転の日。お祝いに瓶ビールが大量に届いたので、
みんなで乾杯しようか。と思ったら、栓抜きがない。こんな時、あなたならどうするだろうか。
その場にいた10名全員が、それまでビール瓶のふたを栓抜き以外の方法で開けたことがなかった。
取引先のお客さんは、「栓抜きがないと開かないから、ビールは明日にしよう」と言っていたが、
僕らはブリコラージュの精神で燃えた。
壁にひっかけて開けようとする者。ライターであぶってみる者。
歯でこじあけようとする者。瓶を割ろうとする者・・・。
15分後、メンバーの一人がついに開けることに成功した。
その場にあった紙一枚を固く折り、てこの原理で開けたのだ。まさか紙で開くとは思わなかった。
Youtube 「Open beer – 紙で瓶をあける」

専用の道具がなければ、ありもので代用する。
お金がない、コネがない、知識がない、技術がない、手が足りない。
どんな状況でも、気合いとブリコラージュで乗り切ることを楽しんでいこうという話で朝まで盛り上がった。
最初から資本や人材やコネに恵まれた人は別だが、現実にはそんなことはほとんどないだろう。
「この道具がないとできない」「予算が少なくてできない」ではなく、
いかに「ありもの」で最高のパフォーマンスをあげるかということだ。
自由とは、なんでも揃ってる状態のことではない。
なにも揃っていない状況でも、なんとかしてしまう能力のことである。たとえば。
「商品を仕入れるお金がない」
→先に予約販売をして入金してもらってから、商品を仕入れればいい。
「事務所を借りるお金がない」
→仕事を手伝う代わりに、間借りさせてもらえばよい。
この方法を「体で払う」と呼ぶ。
「ごはんを食べに外に出るのがめんどくさいし、食費を浮かせたい」
→近くの小学校から余った給食を大量に届けてもらってた。
その代わり、先生たちの悩み相談(主にモンスターペアレント対策)にのっていました。
というように、知恵と技術で切り抜けるのが独立初期の醍醐味だ。
冷蔵庫を開け「じゃあ、ありもので適当につくるねー」と言う女子に、
ぼくたちが惹かれるのは、おそらくその背中にクリエイティビティーと生命力、そして無限の自由をみるからだ。
どんな状況下でも一生楽しく生きていけそうだと妄想させてくれる。
さて、新講義『小さな教室をひらく』がリリースされた。
日本にキャンドル文化を広め、複数の教室ビジネスを成功させてきた廣瀬祐子さんが教授をつとめる。
この講義では、組織や場所に縛られず、夏休みもとり、しっかり稼ぐ女性の新しい働き方を
マスターするのだが、この「小さな教室」というのがポイントである。
大資本が参入するスクール事業ではない。
個人で小さく始められる、しかしブリコラージュの精神が求められるスタイルだ。
冷蔵庫のありもので適当につくれる女子こそ、向いているはずだ。
【text: 深井次郎/自分の本をつくる方法 http://twitter.com/fukaijiro


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