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年間500ミリの雨

-自由大学運営チーム 白井順一

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今回は、自由大学運営チーム、白井の文章です。


最近、文明史や環境史の本をよく読んでいます。
そこで出てきたのが「年間500ミリの雨」というキーワード。
年間雨量500ミリは、農耕ができる限界といわれています。500ミリ以上あれば、植物が成長するために必要な水分を土中に蓄えることができ、同じ地域での農耕を続けることができます。それ以下の地域はどうかといえば、遊牧や移牧の世界になります。
その境界線上にあったのが、ギリシャ・ローマ文明。このようなところに文明が生まれたことは大変興味深いです。ちょっと失敗すると飢え死にする。しかし、工夫すれば生き残れるというギリギリのライン。
エジプト文明のように川の氾濫によって農耕に必要な水を得ていた地域とは異なり、大河をもたないギリシャ・ローマ文明は基本的に雨水だけが頼りです。水がたくさんあれば、なんとなく種を撒いて工夫があまりなくても生き残れますが、少ないエリアでは工夫なしでは生き残れません。そのギリギリのところで人間の知恵と創造力が試されるわけです。

恵まれた環境にいたからといって、新しい発想が生まれるとは限りません。ギリシャ・ローマ文明の人々が、年間500ミリの雨という厳しい環境のなかで二圃制農業を生み出したように、新しい発想を生み出す源は、制約ではないでしょうか。
「本当にこの方法でよいのだろうか? 他に方法はないか?」
制約があるからこそ、上記のような問いが生まれます。問いと思考の繰り返しが、状況を打開するアイデアを生み出すことでしょう。
「あれもない」「これもない」と現状の不足を嘆くのはなく、むしろ、限られた条件のなかで考えてみる。考えていけば、わからないことがたくさん出てきます。そして、これ以上は何かを学ばなければ進めないポイントがでてきます。そこで、もう駄目だと思わずに、拳を握ってガッツポーズをとりましょう。自分をアップデートするチャンスを得たのですから。
環境は常に変わります。なのに自分だけが変わらなくて良いはずがありません。柔軟に変化し、変化に素直に対応し、自分をアップデートし続ける。そんな状況に楽しみながら、軽やかに、タフに、そして、自由に生きていきたいものです。


カテゴリ: ☞ コラム


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