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「ペンで世界は変えられるか」深井次郎(教授 / 自分の本をつくる方法)

なぜ本を読み、書くようになったか。すべて父のおかげだ

なぜ本を読み、書くようになったか。すべて父のおかげだ。典型的なサラリーマンだった父は、ぼくが17歳の頃、30年近く勤めてきた会社が経営難に陥りリストラされた。一生安泰のタイタニックと思われた業界最大手がまさか沈んでしまったのだ。可愛い息子たち、太郎と次郎の学費のため、父は再起を図り、起業するも失敗した。それも2度もである。「父さん、またまた倒産しちゃいましたっ」身をていしたオヤジギャグと笑うしかない母、家族が明るかったのが救いだ。

タイタニックで沈んだ家族として、ぼくはまだ社会に出る前から「サラリーマン恐怖症」になったし、その後の父さんの倒産を一緒に経験していたので「起業恐怖症」にもなった。大学に入り、同級生はサークルだ遊びだ恋だと浮かれていたけど、こちらはそれどころではない。この先、どう働いて生きていったらいいのか、未来がまったく見えなかった。そんな暗いトンネルの中で出会ったのが、本である。「何かヒントはないか」毎日のように古本屋に通い(新刊は高いので)、古今東西の哲学、経営書、自然科学… 貪るように読んだ。

千冊読んだ頃、「今世では、守るより攻めるべし」と見えてきた。二千冊読んだ頃、「起業してやっていけるかもしれない」と勇気が出てきて、憧れの上場企業創業者の門戸を叩き、倍率1000倍の「アントレプレナー採用」を運よく通過、就職させてもらうことになった。初任給は相場の3倍、ヒト・モノ・カネの溢れる高待遇に感謝しながら、自分の起業アイデアを実験し続けた。サラリーマン天国である。三千冊読んだ頃、インプットの器を越えて言葉が溢れだす。仕事のかたわら、ウェブで備忘録のように書き始めた。少しずつ読者がつき、数社から出版オファーが寄せられた。

17歳で読みはじめ、23歳で書きはじめ、25歳でプロの著者になり、仲間と出会い、起業もした。夜しか眠れない日もあるけれど、アラフォーの今までずっと雇われずに、どーにかこーにか人生の舵を自分でとっている。

「ペンと本で世界は変えられる」そう演説をしたのは、最年少ノーベル平和賞のマララさん。教育の力で争いを無くすことができる、というメッセージは多くの共感を得た。正直ぼくはもっと弱気で、いかんともしがたい大きな世界を前にして、「ペンの力など、なんと非力か」とうなだれてしまうことがある。

ただ、これだけは確信を持って言えるのは、「たった一人の世界なら変えられる」ということ。現にぼくは本のおかげで、世界が違って見えてきて、あんなに怖かった起業に踏み切ることができた。父を苦しめた怪物に仇を討てたのは、本が地図となり鎧となってくれたからだ。

旅したい、結婚したい、仕事を変えたい、病気を治したい…。どんな望みにも、助けになる本がきっとある。これからも、何かをしたい人たちの力になる本や、ユニークな著者を世に出すお役に立てたら嬉しい。

(担当講義:自分の本をつくる方法



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