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言葉を変えると、世界も変わる。はじめるヒントはその人のストーリーにある

『お店をはじめるラボ』『農家をはじめるラボ』教授 / 井本喜久さん

次回で15期目を迎える人気講義『お店をはじめるラボ』と新講義『農家をはじめるラボ』の教授、井本喜久さん(通称:いもっちゃん)。いつも明るくエネルギッシュな井本さんのパワーの源はなんなのか? 常に新たなチャレンジを続ける井本さんに、講義をはじめたきっかけや、講義のこと、これからの展望について、自由大学クリエイティブチームの増田がお伺いしました。

 

−『お店をはじめるラボ』も来月から新しい期がはじまりますね! そもそも井本さんがこの講義をはじめたきっかけはなんだったのでしょうか。

今の自由大学キャンパスがある「COMMUNE 2nd」が「246COMMON」だった2012年に、ここにはじめてお店( Brooklyn Ribbon Fries )を出したんだよね。でも、天候によっては、全然集客ができなくて…。そこで、もっとこの場所を盛り上げよう!と自由大学の公開講座のようなイベントをしようと思ったんだ。

そのときに、自分が一番知りたかったことが、”どうしたらもっと面白いお店がつくれるのか?” ってことだったから、”面白いお店のつくり方” を探求するような『お店をはじめるラボ』をはじめてみようと思ってね。

自由な発想で面白いお店やっている人ってたくさんいるんだよね! 話を聞いているだけで、お店のヒントとなることがたくさんあるし、なにより自由大学の哲学や、”キュレーター” っていう存在がすごい面白いと思って。

 

− たしかに!わたしもキュレーターをしてますが、教授の良さを引き出して、受講者に伝えたり、受講者目線で教授の知識を伝えたり、受講生が主体的になるための環境作りをするのがキュレーターの役目なのかなと思っています。やっぱり、”キュレーター”の存在は、自由大学の特徴でもあり、面白いですよね。

そう! あとは自由大学の「教える側も学ぶ側もフラット」っていう哲学も好きなんだ。みんな外に対して「〇〇を教えて」って答えを求めるけど、答えはもうすでに自分の中にあるんだよね。それに気がつくかどうかだと思う。

それに、誰かに教えようと思うと、結果として自分が一番学ぶし、自分の内面を見つめるきっかけになるんだよね。実はね、最初にお店をはじめたときは、儲けたいって下心があったの(笑)! でも、自由大学で講義をはじめて、自分の内面に触れていくうちに、本当にやりたいのはなんなのかってことに気がついたよね。

 

ー 井本さん自身も講義をしながら、気づきや学びがあったのですね。『お店をはじめるラボ』はどんな講義なんでしょうか?

お店をはじめたゲストのライフストーリーを聞く感じだね。この人はこんなバックグラウンドで、こうやってお店をはじめたという小説(ストーリー)を聞く感じ。

お店のはじめ方って100人いたら100通りやり方があるし、マニュアル化するものじゃないと思うんだよね。どういう感覚で、どのようにアプローチして、そうなったのかを想像しないと、なぜこういうお店が生まれたのかってわからないと思うんだ。だから、資金や原価計算みたいな部分だけ切り取るんじゃなくて、それぞれのライフストーリーを聞くことで、「ああ、なるほど!」って気がつくことができて、それがお店をはじめるときの一番ヒントになると思うんだよね。

ー 井本さん自身、講義をはじめて何か変わったことってありましたか?

「お店をはじめるラボ」は、8:2くらいで女性の割合が多いんだよね。今まで男社会で生きてきたから、女子の才能みたいのを吸収することができたかな。ほら、女子ってあれもやってこれもやって、同時にいろんなことできるし、共感力もすごいよね。 あれは、男子はなかなかできないよ!

あとは、資料を用意しなくなったね。「マニュアルはいらない」って言ってるのに、最初はパワポの資料を用意してて…(笑)。でも最近は、目の前の参加者たちの顔を見て、そこで発するエネルギーを感じて、思ったことをその場で話すようにしているかな。人生はサーフィンみたいなものだと思っているんだけど、どんな波が来るのかって、そのときの状況や情景によって違うでしょ。だから、講義の中でも波に乗るようにしているんだよね。

 

ー これから新しく『農家をはじめるラボ』もはじまりますよね。そもそも農家に興味をもったきっかけはなんだったのでしょうか?

実家が農家なんだけど、昨年父が亡くなって、跡継ぎどうしようってなったんだよね。東京での仕事もあるから農家を継ぐことはできないし…。だからと言って、耕作放棄地にはしたくはなくて、地元の人にお願いをしたんだよね。そしたら、「若手です」って70歳の人が現場に来てさ(笑)。この若手のいない現状をどうにかして、日本の農業を元気にしたい! と思ったのがきっかけだね。

だから今年から、「こんなに面白い農家さんがたくさんがいるんだよ!」ってことを、農業について学びながら若者に知ってもらえるような、オンライン農学校をはじめようと思っているんだよね。今までは目の前の人を喜ばせることをしてきたけれど、これはネット上での活動になるから、より多くの人をターゲットとした新たな挑戦。

ただ一方で、ミニマムなリアルなつながりも大事だと思っていて、体験型でより実践的な農の現場を見せていく『農家をはじめるラボ』をやってみようと思ったんだよね。

 

ーこの講義では、合宿もするんですよね。みんなで土に触れてご飯を食べて、楽しそうですね!

そうそう!ごはんを食べに行った回数で、仲良くなる度合いって変わると思うし、ましてや合宿したら、かなり濃い仲間になるよね。この講義は、農業体験をしながら合宿をして、農家をはじめることについてみんなで探求する。マス(オンライン農学校)への挑戦と同時に、ミニマムな活動も大事にしていこうと思ってね。

 

ーなるほど。井本さんを含めてみんなで探求していくんですね。

自分も知りたいから一緒に勉強したいし、だからこそ、みんなと同じ目線で話ができるんじゃないかと思っているよ。農家のはじめ方って、お店のはじめ方と同じで、100人いれば100通り、やり方もマーケティングの仕方も違うから、その人たちのストーリーを聞くだけで、学ぶことだらけだよね。

それに農業は、地域との関わりも重要で、その地域に流れる水とか土とか、その土地のことを知らないといけないから、そう考えると、お店をはじめることより難しいかもしれないよね。

 

ー農業というと、大変で儲からないイメージ持っている人も多いと思うのですが、井本さんの周りには、面白い農家の方がたくさんいますよね。面白いと思う農家の共通点ってなんでしょうか。

ひとつ共通しているところは、”愛がある”ってことだね! 奈良で農的暮らしをしている人は、野菜にも「ありがとうね」「元気?」って声をかけているんだけど、その人の作った野菜が、すごーく美味しい! 人間も一緒だと思うけど、言葉が変わると、人も引き寄せるものも変わるし、やっぱり言葉って大事だよね。

ー 井本さんの言葉は、いつも前向きでパワーがありますよね。そのエネルギッシュな井本さんのパワーの源ってなんなのでしょうか。

自分の心をワクワクさせたいからかな。周りの人を喜ばせることが、自分の喜びになっているんだよね。誰かが喜んでる状態をつくるフェチ(笑)! あとは、誰かが成長していく姿を見るもの好きなんだよね。だから自由大学は、講義後に受講生がお店を出したり、人生が豊かになったり、変わっていく姿を見ることができて、すごく居心地がいいんだよね。

あとは、世の中を変えようと思ったら自分の心を変える、心を変えようと思ったら、言葉を変えることかな。それは、ネガティブなことを考えないようにするんじゃなくて、楽しいことしか考えない。どうやったら楽しくなるか、どうこの状況を楽しくさせるかをいつも考えているから、言葉も自然と変わってくるよね。面白い、楽しいことで溢れている状態はとても大事。言葉を変えて元気に生きていこう。前向きな人生のスイッチ入れようよ!

 

担当講義:「お店をはじめるラボ」「農家をはじめるラボ
取材と文・写真:石川妙子(ORDINARY



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