ブログ

いま、ファッションに関する講義を練っている。

私たちは毎日毎日服を着ている。文章を書くことや写真を撮ることも自己表現のうちのひとつだけど、ファッションは誰しもが毎日している、一番身近な自己表現ではないだろうか。

でも街でふと周りの人が着ている服を見渡すと、目に入るのは黒、白、グレー、ベージュ・・・。冬は特に、ベーシックな色で埋めつくされている。私たちは顔も、身体の特徴も、全体の雰囲気も一人一人違うものを持っているはずなのに、どうも「みんな同じような服を着ている」ように見えてしまうのだ。

かくいう私も、会社員だった頃はモノトーンの服ばかり着ていた。迷った時は「無難な色」を選ぶようにしていたし、メディアに取り上げられているトレンドに乗り遅れまいと、毎シーズンそれなりの量の服を買っていた。それなのに、季節が変わるたびに「着るものがない!」という状況に陥っていた。

先日、その講義を一緒に計画している元スタイリストの教授にスタイリングをしてもらった。彼女が選んでくれたのは、自分では絶対に選ばないような鮮やかなピンク色の服だった。でも「絶対に似合うから」と言われて着てみると、驚くほど自分の肌の色にしっくりきていた。そこで初めて、自分がこれまで「この色は似合わない」と頭ごなしに否定していたこと、「自分にはどんな色やどんな形の服が似合うのか」ということについてきちんと考えていなかったことを知った。

自由大学のプリンシプルのひとつに「囚われるな、こだわれ」という言葉がある。「囚われる」と「こだわる」の違いは何だろうか?と考えた時に、私は「囚われているのは受け身で、こだわっているのは主体的」ではないかと思った。

ファッションも、自分を知ろうとせず、情報ばかりに流されてしまうと囚われてしまう。でも、自分を知って、自分の個性を引き出してくれる服を選ぶことができるようになれば、それはこだわりになる。自分がこだわって選んだ服だから、服を着るだけで毎日が少し豊かに、幸せな気分になる。

そんな風に暮らしに彩りを与えてくれるようなヒントを、ファッションというテーマで伝えていきたいなと思っている。


カテゴリ: ☞ コラム

タグ: ☞ 増田早希子


関連するブログ