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【vol.12 岡島悦代】着想なくして構想なし

好奇心のフラグ

毎回クリエイティブチームのメンバーと、メルマガのテーマを事前に共有して書いている。前回は「個性を磨く」そして今回は「創り伝える」に着想を得て書く事になっている。これらは、自由大学にある7つの学部に由来している。出版や文章の書き方、写真や音楽など、人に何かを伝えたいという欲求から先人が知恵を絞って生み出したプラットフォームを使いこなし、自分のことを表現する講義が並んでいる。自分の中にあるものを伝えようとしたとき、必ずぶち当たる壁がある。「私は何が好きで、なぜそれを好むのか?」ということ。もし、講義中に一度でもそんなことを考えてくれたなら、自由大学生らしさが芽生えてきた証拠。なぜなら、私達の講義づくりは何かが出来るようになる技術や実現させるための方法よりも先に立つ、自分を掘り下げることにアプローチしているから。

そして私は「何が好きか分からない」から先に踏み出すことは、誰でも簡単にできると思っている。“自分の軸”という言葉は自由大学に良く出て来るキーワード。それは形骸化した価値基準や社会の同調圧力から逃れたあなたの判断基準や美意識はどこにあるのかという初期設定のことを指す。私は、軸を「つくる」よりも彫刻のように「彫り出す」感覚に近い。仏師は一本の木から仏様を見いだすように、何処を削り生かすのかを判断しながらかたちをつくっていく。私達も、何に美しいと感じて自分に取り入れ、そうではないものと距離を保つのか。その判断基準をどうやってつくっていくのかだけれど、こんな身近な方法を試してみるのではどうだろう?

映画を100本観てみる。大衆にウケるようにつくられたハリウッド映画ばかりだとつまらないから、非英語圏や監督の美意識がたっぷり詰まったアートフィルムなんかもその100本に入れてみる。そして、その映画の何が好きでなぜ嫌いなのかを全部書き留めてみる。どのシーンでアドレナリンが出たのか、眠くなったのか、実際に寝たとか。私はスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」は何度も寝落ちして、HAL 9000が登場するところまでしか記憶にない時期が20年くらい続いた。だけれど、もっと強者がいて猿がモノリスに触るところまでを繰り返し観ている、という人もいた。時には全てのストーリーを理解するよりも、自分が何に惹かれるのかを意識的に紡いでいくのがいい。100本見終わった後に残った自分だけのメモの中身を時折パラパラと読んでみる。そしたら、あるとき目の前がパッと開ける瞬間がやって来るはず。



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