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【vol.11 いろんな思い込み】岡島悦代

好奇心のフラグ

ある時、カナリアが家にやって来た。CDジャケットの撮影で、ライアン・マッギンレーの写真のような、羽を広げて羽ばたく躍動感のある瞬間を収めようと用意されたものだ。しかし、望んでいた構図は全くの期待外れに終わり、お役御免となったカナリアを私が引き取ることになった。ちょうどその時、白い文鳥を2羽飼っていたので、一緒に面倒を見ることにした。よほどストレスを与えられたのか、かごの隅で数日間オレンジ色のお饅頭のように丸まっていた。そして、文鳥はあまり興味を示さなかったロメインレタスをひたすら食べていた。

カナリアは、モロッコ沖の大西洋にあるカナリア諸島が原産地で、18世紀後半に長崎に入って来たと言われている。常春の島出身で、バレエ「眠りの森の美女」でもカナリア役は“のんきの精”とも言われているので、大らかな性格と思いきや、かなり繊細で少しでもストレスを与えると、立ち直るまでに時間がかかった。天気の良い日にベランダで日向ぼっこをさせていたら、カラスがやって来て、かごの上からくちばしでガンガン叩かれて落ち込んでいた。ペットのカナリアといえど、カラスパイセンの縄張りにいる限りは挨拶をしないとシバかれるという鳥社会の現実を目の当たりにした。

カナリアは人に懐かず、手乗りにするのが難しいと言われている。家から帰って来ても、犬のように嬉しい素振りは見せないし、かごの掃除をしても綺麗になって気持ちいい!という感謝の気持ちは一切見られない。だけれど、毎日の餌やりと観察から気づくことを本やネットで調べたり、ペット屋さんに相談したりして、自分なりのカナリアの知見が溜まっていくのに充実感を感じていた。かつて渋谷西武の屋上に鳥に詳しいおじいさんが経営しているペット屋さんがあって、その店主が雑穀を調合した餌を買っていた。毎回足を運ぶと普通のペット屋さんにはいない珍しい鳥たちに会うことができ、心から鳥が好きでこの商売をしているのが伝わってきて、そこに足を運ぶのが好きだった。

目の周りに長いまつげのように毛が生えていたので、カトリーヌ・ドヌーヴのつけまつげから連想してカトリーヌと名前を付けていたけど、オスだった。10年間一緒に暮らして、長期旅行の時はペットホテルにお世話になった。ただ、カトリーヌが天国へ行って3年経った今年も「カトリーヌちゃん」宛に年賀状が届いた。また鳥を飼いたいな。



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