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【vol.11 築地、歴史の地層】花村えみ

解像度をあげるWHY

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つい最近まで築地に8年間住んでいました。現在築地市場がある土地は歴史ごとにまったく違う使われ方をしてきたことを、ご存知ですか。神社仏閣がひしめいていた時期もあれば、海軍が使っていた時期もあり、魚河岸になったのは昭和になってからのことでした。築地市場を歩いていると、あらゆる国々の人が宗教や食文化の違いという垣根を超えてこの場所に惹きつけられているのを体感します。それは美味しいものがあるから、珍しい道具が集まっているから、江戸っ子かたぎなオヤジさんが面白いから、人によって挙げる理由はそれぞれでしょうが、私は時代ごとに持ち去ることを忘れられた断片たちが街のあちこちに見え隠れしている、そんなところがこの街の面白さだと強く感じています。

住む物件を探す時も、旅に出る時も、土地が持つ味を楽しみます。味という言葉が抽象的すぎるとすると、何が起こっていた土地かということです。人がどんな感情でそこに存在していたかです。今何が起こっているかということ以上に、実は積み重ねられた時代ごとのストーリーが空気感を作り出すなと感じています。

視点を広げてみると、これは土地や街の話だけではなく、会社や人間自身にも当てはまることです。積み重ねられたものから滲み出るものに個性を見出します。

勝鬨橋を渡って歩を進めると豊洲につきました。これから市場が豊洲側に移転をするとなると、美味しいものも珍しい道具たちも移動してきます。時代ごとのストーリーを全く持たないこの土地で、さてこの築地の面白さを再現できるものだろうか、いや作れまい、と感じたりするのでした。



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