「必要なのは全く新しい何かを生み出すこと。改善とか調整とかじゃない」
守りに入りそうになるとき、いつもこの言葉を思い出すようにしている。ギリギリの冒険の先にのみ、未来はあるのだ。先日も、講義を一緒につくっている染め職人に、何故挑戦し続けられるのかと聞いてみた。「伝統というのは革新の結果でしかない。守り続けると伝統というのは廃れるんだよ」と語ってくれた。彼は今、江戸小紋柄を絹の反物ではなく、布のように薄い革素材に型染めする挑戦をしている。あなたも小手先の改善や、微調整を重ねることに嫌気がさしだしていたら、新しいモノ・コト・価値観を生み出すべき時がきているのだろう。
ではどうすれば something new を生み出せるか。一つは異質な情報をぶつけてみて、視点の外れ値をつくることだ。例えば自由大学の講義が生まれる場所 レクチャープランニング・コンテストでも、思考を跳ばすための仕掛けについて意見を出し合う。一つの世界に没頭すると視野が狭くなりがちだが、そこに違う専門分野からの情報をぶつけてみると、目線がぐっと俯瞰的になる。講義発案者も握りしめてきた自分の専門分野から、一度離れてみる冒険心が出たらしめたものだ。
視点の外れ値を打つことは日常から挑戦できることだ。近年発酵について興味を持ち始めた私は、我が家のテーブルに怪しげな実験物たちを並べては、夜なよな観察を楽しんでいる。発酵はじっくりと待つことが調理になる。答えを出そうと焦らない、時間をかけてみると思わぬ科学が生まれる、という視点は、この発酵の観察がもたらしてくれたと思っている。これからも発酵や菌の世界が、私にどんな視点をもたらすことになるのか、ワクワクしている。
この忘年会シーズンは、もしかしたら思考の外れ値を打つのにもってこいの時期ではないだろうか。いつもは理性があなたにブレーキをかけているからだ。お酒を酌み交わしつつ、馬鹿らしいと言われるネタで本気の語らいをしよう。自分とは興味分野が違うと思っている人とじっくり話してみよう。きっとそのテーブルにはsomething newがひょっこり芽生えるはず。
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