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【vol.6 Shall we オーダーメイド?】花村えみ

解像度を上げる問い

自由大学READY STUDY GO

モノ余りの時代になってくると、人間が最先端になってくる。そんな中で、一つずつ手作りされるモノの価値が上がっているのは必然なのかもしれない。

いま自由大学で江戸小紋・江戸更紗・東京染小紋という型染め着物の職人さん達と一緒に講義を作っている。東京神田川沿いには今でも20から30の染めに関わる工房が軒を連ねている。彼らが得意とするのは一枚ずつ手作業でお客さんからの要望に応えながら作るオーダーメイドだ。お誂えの着物は反物で20万ほどすることが多い。こんな高い商品誰も買わない?若者が高い買い物をしなくなったと言われがちだが、周りを見渡せば20万円かけて世界旅行をする20代はたくさんいる。なぜ世界旅行にはお金を払うのに、着物にはお金を払わないと思われるのか。

ちなみに人は一体どんなものだったらお財布を開くのだろう。私の近年最大の支払いは結婚式。誇れたものではないけれど、すべての経費などを含めると350万ほどに積み上がってしまった。その支払いでどんな要素を買ったのかというと、当日は花嫁に注目が集まるからと、いつもの自分以上に美しく見せてくれること(瞬間風速バリューアップ!)、友人の結婚式と少し違う趣向をこらしたいというものだった。私らしい⚪︎⚪︎という演出はお金がかかるものの、作り上げていく過程を体験できるという部分も、得体の知れない満足感を与えた。

そう考えていくと、オーダーメイドをする価値は、手作りというプロセスの部分ではなく、この大量生産の時代において、自分が想定していないさらにいい自分を作り上げてくれるものが、小回りをきかせて近づいてくれる、というチャンス=結果だ。既製品で自分をバリューアップしてくれるものよりも、手にした時の喜びが大きいのは何故か。オンリーワンという部分ではなく、きっと自分が関与した事実が欲しいのだろう。さらに踏み込んでいくと、関わってくれた職人さんや関係者に『自分のために時間を費やしてくれてありがとう』という想いかもしれない。

改めてみなさんに問うてみたいことがある。どんな物でオーダーメイドをしたことがあるかということ、そして何を求めてオーダーメイドしたのかということ。

オーダーメイドを行う物や業界は高額なため、規模がしぼんでしまう可能性が高い。しかしそれがなくなってしまうと、私たちが持つ選択肢は本当につまらなくなってしまうように思えて仕方ないのだ。

 



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