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【vol.2 サンドイッチの思い出】岡島悦代

好奇心のフラグ

自由大学READY STUDY GO

サンドイッチを食べることすら、慣れない街で戸惑うことがある。学生時代、ロンドンでガラスのショーケースに綺麗に具が並べられているサンドイッチ店に入った。イタリア系の腕っ節の強そうなスタッフに、カウンター越しにターキーサンドイッチを注文すると、パンの種類を聞かれた。そして、「ターキーだけか?」と聞かれ、「はい」と答えた。

そして出てきたのが、固いパンにターキーのみが挟まったサンドイッチ。レタスやトマト、チーズも一緒に挟まっていることを想像していたので、簡素すぎる出来映えに呆然とした。後から来るお客さんを見ていると、パンに挟む具の種類や量を一つ一つ細かく注文していた。そこではじめて「ここはカスタマイズできるサンドイッチ屋さんなんだ!」ということに気づいた。幸い「パンにバターは塗るのか?」という事は聞かれたので、パンにターキーが馴染んでいた。

「もっとスタッフとコミュニケーションを取ればよかった…。」と落ち込みながらサンドイッチを食べていると、「日本から来たの?」と声を掛けられた。そして矢継ぎ早に「テディの公演見たか?」とか、いろいろ言って去って行った。テディ…。話の文脈から推測すると、東洋人で初めて英国ロイヤルバレエ団に入団し、最高位のプリンシパルに昇り詰めた熊川哲也さんのことだった。

傍から見たら、ほぼ具のないサンドイッチを落ち込みながら食べている姿が不憫でならなかったのかもしれないと、今更ながら思う。でも声をかけてくれた紳士の励まし方が洗練されていて、モッズとかパンクとか先端的なカルチャーを生み出してきた背景には、正統な文化を理解している層がしっかりといるんだなあ、と思った。

それから、新たな旅の目的地を見つけるとホテルや本屋、マーケットの他に必ず街のシンボルになっている劇場を探して、演目を調べる。ここ何年か頻繁に行くポートランドも100年続くアーリン・シュニッツァー・コンサートホールがある。

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