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よくイスラームについては「右手に剣を、左手にコーラン(クルアーン)」を手にする宗教だといわれる。
つまりはイスラームは戦争か、改宗か、という究極の二者択一を迫る好戦的な宗教だという誤解があり、そこに私たちは疑いもあまり持たないのである。
そもそもからして、左手はイスラームにおいては不浄の手だから左手にクルアーンを持つこと自体があり得ない話なのだ。むしろイスラームはこのイメージとは逆に、非ムスリムに対して信教の自由を保障している。
“宗教には強制があってはならない。正に正しい道は迷誤から明らかに分別されている。それで邪神を退けて神を信仰する者は、決して壊れることのない、堅固な取っ手を握った者である。神は全聴にして全知であられる。”(クルアーン2章256節)
これは預言者ムハンマドがメッカ(マッカ)からメディナ(マディーナ)に遷ったときのマディーナでの一節である。
イスラームには「ウンマ」という概念がある。
俗にイスラーム共同体と訳されるけれど、それはムハンマドがマディーナの地に理想的な新秩序を打ち樹てたそのムハンマドの作った共同体を理想にしている。それは全ての人々が争いがなく、そして心に平安を得て、助け合い、そしてマディーナの地にいるユダヤ教徒やキリスト教徒とも平和に共存してく共同体である。マディーナの地にいるユダヤ教徒やキリスト教徒に改宗を強制することなく、彼らの自由意思を尊重した。
そう、イスラームは強制ではなく自由意思に基づき、自ら選択することを重要視するのである。
それでも私たちが目にするニュースとは全く真逆だと思うかもしれない。
そりゃそうだ。だって、日常のなんでもない国外の情報がニュースになるわけはないのである。ニュースとは「異常事態」を伝えるもの。
ニュースを知ることで異常事態はわかるかもしれないけれど、そうでないものはなかなか知ることがない。
ニュースやウワサ話で培った偏見をやぶって一歩踏み出すと、そこには豊かで自由な世界が広がっているかもしれない。
[text:小出一富]
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