ブログ

対談:自由な働き方のヒント。Good Financeが生むGood Creativity

「脱藩学」教授・跡部徹×クリエイティブチーム・花村えみ

ph001

「脱藩学」教授・跡部徹さんとクリエイティブチーム・花村えみさんが「働き方」にまつわる対談をしました。かつて「脱藩学」の受講生だった花村さんがクリエイティブチームで働くようになった今、改めて跡部さんに聞きたい空気読み仕事術とは?

(ライター:新井優佑)

*自分の仕事は市場が教えてくれる

花村さん 跡部さんは2008年に一人で創業した株式会社空気読みとして働いています。大きな組織に所属していれば、自分の成長を誰かが評価してくれる安心感がありますけど、一人だと自分の仕事を自分で評価していかなきゃいけないわけじゃないですか。

跡部さん それは逆じゃないかな? 企業の中にいると、社内評価しかもらえないけれど、一人でやると自分が機能しているかどうかって市場が評価してくれる。市場に対して自分の旗を立てるから、フィードバックとして仕事がきて、積み重ねていって評価が生まれる。そして、また仕事がくるか全然こなくなるか決まる。

やっぱり信頼はブランドだし、声をかけてもらえるかってPLやBSには現れないけど、とても大事なもの。だから対クライアントでも、対チームでも、ぼくに仕事を任せなかったりぼくの依頼を断ったりできる中で、一緒に働けているってことが評価なわけですよ。

ph002

花村さん そうですね。跡部さんのような働き方をしたい人は多いと思うけど、跡部さんがその働き方をしていられるのは、やっぱり前職での人とのつながりが大きいのですか。

跡部さん ぼくは雑誌の編集部というフラットな中に、そもそもこういう文化があったわけですよ。雑誌は記事の集大成で、一つひとつの記事がプロジェクトとも言える。ライターさんも、カメラマンさんも、デザイナーさんも基本的にフリーランスの人たちで、力を合わせてページをつくってきた。

当然1ページの予算は決まっていて、スケジュールに余裕があっても緊急でも単価は変えられない。そんな中「明日までの急ぎでお願いします」って頼んだ時に、それを引き受けてもらえるかどうかは、編集者が信頼感をつくれていたかにかかってる。

花村さん それはかける労力はまちまちでも、ステーブルなアウトプットを出し続けなきゃいけない中で、人間的なつながりも蓄えていなきゃいけない。そういう底力を培ってきたことが大きかったという話ですか?

跡部さん そういう社会のルールで生きてきちゃったというか。

花村さん 特殊ですね。

跡部さん でも、もしかしたら会社員が特殊なのかもしれない。固定給が決まっていて、出勤していれば労働時間としてお金をもらえる。その代わり「急に朝までやってくれ」って言われても断れない。フリーランスは「受けないわ」って断れるから。

*仕事はもっと自由なもの。カンニングもし放題

花村さん わたし昨日考えたんです。どうして「脱藩学」が今の仕事をしているきっかけになったのか。

「脱藩学」は会社をやめましょうっていう講義ではなく、講義の中で自分の求めていることに近い人をインタビューしにいく。そのインタビュー先を決める時、跡部さんとキュレーターの二人が「この人だったらいける」とか「この人は知ってる」って紹介してくれるじゃないですか。それにジェラシーを感じていたんですよ。

わたし全然、社会的なつながりを持っていないんだなってことをリアルに感じさせられて、いくつかある退職したきっかけの中でも意外と大きかったなって感じました。

ph003

跡部さん それはたぶん、仲間や社内だけじゃなく、外に出た時にどんな人と関係性をつくっているか、ということ自体が商売だし、自分の力だと思ってもいいみたいな話だよね。

花村さん 人脈っていう言葉はあまり好きじゃないけど、困った時に助けてくれる人が跡部さんの周りには見えてきて、跡部さんのように働くと物事を生み出せるんだって感じたんです。

跡部さん 昔からそうだったはずなんだけど、働くことって基本、受験勉強のように一人でカンニングせずに答えるものではなくて、みんなで問題を解いてカンニングもし放題。「あっ、これは誰々の得意分野だから大丈夫」だと思えれば、一人だと厳しい仕事でも「余裕でできます」って引き受けることができるほど自由なものだよ。

空気読みは基本、自分の経験や能力を提供して、一緒にプロジェクトをゴールにもっていきましょう、っていう仕事のしかたに取り組んできた。何を目的にするかを手にするところから取り組んでいて、逆に言うと企業ではそれができないから出たところが大きい。

企業にいると、どうしても会社の中の商品や解決方法に合わせることになる。ぼくにはやり方もゼロベースから考えるほうがあっているから。

花村さん 面白いですね。コンサルティング会社は当て馬に陥りがちですが、跡部さんのやり方なら、思考が停止した人を蘇らせることができそうです。

*消耗品で溢れない社会をつくる市場とは

花村さん 一人でできると踏んだ理由はなんですか?

跡部さん 人を雇ったら、自分より他の人がやったほうがいい案件まで取らなきゃいけなくなったり、付き合いたくないけどお金になるクライアントの仕事を続けなきゃいけなかったりする。プロジェクト単位で仕事をすると、そういう仕事をしなくていいことはすごく大きなメリットだという気がしてるというか。

だから、へりくだるわけではなく、クライアントとの関係もガチンコでフラットでいられるし。ぼくはプロフェッショナルとしてこう返せる、という中で仕事がしたいし、相手がやっていることに共感できないなら受ける案件じゃないとも思ってる。

花村さん すごいわかる気がしていて、GoodFinanceがGood Creativityをつくる感覚ですよね。

ph004

跡部さん システムが大事だと思っていて、それをちゃんとやるべきというか、社会の仕組みってそうであるべきだと思ってる。うまい仕組みができていれば、良いものが起こるから。

ぼくは前職で中古車マーケットが好きになったんだけど、じゃあ車が好きかっていうと正直それほど好きでもない。でも、中古マーケットは面白いと思っていて、それは中古取引市場があるということが良いものを長く社会に残していくことにつながっているから。

商品価値がある車は結果的に長く生き残っていく。安請け合いの消耗品ばかりにならず、長年使われるような良い車を残そうと開発が進む。ちゃんとお金がついて、ファンがついて、売買され続ける。そういう仕組みが消耗品ばかりにならない社会をつくるから、大事だと思ってるかな。

2016/01/20 自由大学にて

【関連サイト】
株式会社空気読み
脱藩学



関連するブログ