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データ解析は「なんとなく」から真実を割り出す面白い武器

フリユニピープル「データサイエンスR道場教授」 中川達生さん

データサイエンスR道場は今年開講し、第4期を数える人気講義。統計とかデータ解析というと、難解そうで敬遠しがちですが「アイスコーヒーが売れる要因」などなんとなく「こうだろう」と思っていることを数字で明らかにできる面白い技術です。PCが苦手という人もこの講義を受けると無料のRというツールでデータ解析ができてしまうというのですから気になりますね。そこで教授の中川達生さんに講義についてお話を伺いました。

nakagawa

中川さんと自由大学の出会いは3年ほど前「アプリクリエイター道場」に受講生として参加したところから始まりました。野球少年だった中川さんは学生時代それほど勉強熱心な学生ではなかったそうです。しかし社会人になってみると、必要に駆られていろいろ勉強したいことが出てくるもの。そんな中、興味があることを好きなように「自由に学ぼう」というコンセプトに共感し、自由大学に居心地の良さを感じました。

「その頃のアプリ道場はみどり荘だったので、建物からして非日常空間、いいなあと思いました。講義といっても一方的に習うのではなく、教授との関係も双方向で、受講生同士の交流も盛んで、今後も関わっていけたらいいなと思いました。」

4回の講義で基礎はOK、仕事にもすぐ活用できると好評

その後まもなく会社を辞めて独立し、技術系ベンチャーを立ち上げました。自分でセミナーをするなら自由大学がいいと思い、さっそくレクチャープランニングコンテストにエントリーしました。

データサイエンスというのは、データで物事を分析するテクロジーです。私はデータ解析技術を軸に起業し、メンタルヘルス向けの研究開発やマーケティングへの利用などのサービスを展開しています。データサイエンスと聞くと、理系の向けのイメージがある技術ですが、様々な分野で活用できる便利で面白い技術なんです。受講された方からも、営業職やマーケティングの現場など仕事で活用できたという嬉しい感想をいただいています。

弊社では中小企業に『マーケティングや営業戦略分析・経営分析にデータサイエンスを取り入れましょう』と草の根的に営業しているのですが、それだけではなく、みなさんにやり方を理解して頂けたら自前でできるようになるので、データ解析が未導入の分野にも広がり、もっと世の中の役に立つなあと思ったんです。」

まもなく開講が決まり、受講生を募集してみると、仕事ですぐ必要だという人だけではなく、数学アレルギーだという人や、PCさえ苦手だという人など、普段はデータサイエンスとあまり縁のないような人も含め、いろいろなバックグラウンドの人が受講して下さいました。

「PCが苦手でエクセルもできません~という受講生がいましたが、最終的な課題としてやっていただくデータ解析では見事な発表(その方のテーマは競馬予想)をやり遂げられました。統計解析ソフト自体がフリーソフトで無料ですし、オープンデータと言って統計データもウェブ上にたくさん出回っています。今まさに時流に乗っているというか、データ解析がやりやすい環境が整っているんですよ。」

解析というと難しいプログラムを書かなくてはいけないようですが、エクセルで作成したデータを教授から提供される既存のプログラムに当てはめるだけ。コピペでできる作業も多いので、憶えてしまえば簡単なのだそう。データ解析に必要なプログラムの基礎知識などは、誰でも4回の講義でできるようになるカリキュラムが工夫されています。説明を聞くと簡単そうですが、そもそもデータ解析でわかることってどんなことなのでしょう。

ビジネスユースはもちろんだけど、そんなことまでわかるなんて!

「本当に身近なことなんです。例えばアイスコーヒー。喫茶店でどんな気温の時に、あるいは何曜日にどれだけのアイスコーヒーが売れるのか、そんなことも気温の変異と曜日ごとの来客数がわかるデータがあればある程度の予測ができます。経験と勘でなんとなく『こうだろう』と思っていたことが、数値ではっきりします。

他の例として、ある営業の仕事で、受注を伸ばすために顧客回りの回数を増やそうとする人がいるとします。そんなとき本当に顧客周りの回数と受注数が関係しているのかどうか、疑ってみてほしいんです。パッと思いつく印象では関係があると思い込んでしまいがちですが、そういった思い込みもデータで定量的に見える化が出来ます。解析してみると受注数の要因はそれ以外の因子だったりすることもあるんです。

スポーツの例で言うと、野球の送りバントもそうです。みんな死ぬほど練習するのに、実は統計的には送りバントは全く勝利要因じゃなかった… とかいうことが客観的な数字でわかってしまう。

それまでいわゆるKKD(経験と勘と度胸)だけでやっていた方法が、真実が明らかになって改善されれば、会社員が無駄な残業をせず帰れるようなことにつながるかもしれない。本当に効果のある要因がわかることで、仕事の仕方も変わり、正しい努力の方向がわかる。すると仕事に余裕ができて、例えばもっと家庭や趣味に時間を割いたりするかもしれない。人々の幸福な未来にもつながるデータ解析に可能性を感じているんです。」

教授として講義をしていると、教えるだけではなく受講生から学ぶことも少なくなかったのだそう。統計データに関わる仕事をする人だけではなく好奇心で受講する人もいる、予想のつかない多様性が自由大学の魅力でもあります。

「5回の講義のうち最終講義が各自のデータ解析の発表になります。みなさんユニークですが、例えばアイスの『ガリガリ君』の売り上げは何が一番の要因かということを調べた人がいたり、パソコンを買う時にコストパフォーマンスが一番よいのはどんな条件が整ったときかを数式化した人。自分のフェイスブックに『いいね』をもらえるのはどういう要因かを数式化して割り出したり。私が思いもよらないことにデータ解析を使っているのが、新鮮でした。」

第4期目を迎える中、開講から一年もたたないうちに受講生から自発的に「勉強会」を開催したいという申し出があったり、基礎編だけではなくもう少し詳しいことを教えてほしいので中級クラスを企画して欲しいなどのニーズがあり、検討中なんだとか。

数学が嫌いでどうしようもない!というような超文系の人も一度やり方を憶えると面白くてはまってしまうらしいデータ解析の世界、なんとなくもやもやしていることをすっきり明確にできるというのですから、ビックデータ時代の人間としては一度かじっておくべき、かもしれませんね。

(取材・撮影 ORDINARY



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