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【自由大学マガジン vol.140】「要領が良い」は長所ではない|鈴木収春

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みなさんは、「要領が良いこと」を長所だと思っていないだろうか。私は昔、そう信じていた。大学時代、女子からノートをゲットすれば、全く出席しなかった講義でも簡単に単位がもらえたことが良くなかったのかもしれない。

しかし、社会に出て編集者として働いてみて、それは大きな間違いだと気づかされた。例えば、要領の良いライターは、誰かにインタビューするときに、サクッと10分間ウィキペディアなどの情報をチェックして、現場に臨むかもしれない。それでうまくいくこともあるだろうが、こうした手抜きは、いずれ必ず大きなトラブルを生む。

何人かの著名人に直接訊いてみたが、ウィキペディアにはかなりの間違いがあるらしい。間違ったエピソードを鵜呑みにして、それに関する質問をしてしまったら、印象は最悪になる。怒って帰る人もいるだろうし、「こいつは適当だから、次から取材NGにしよう」と思われても仕方がない。フリーランスなら致命傷だ。

一方、愚直に過去のインタビューに目を通し、著書などの資料があれば読み込んでくるライターは、それだけで評価が上がる。著名人から一生指名されることも少なくない(ミュージシャンは指名する人が多い印象あり)。

ことわざには、たまに普通に考えると謎なものがある。そのひとつが「急がばまわれ」だ。どう考えても要領良く最短距離で直線的にゴールに向かったほうが早そうだが、このことわざはそれを推奨していない。しかし、なんかこう、正しいと思わせる魔力がある。

自由大学の良さも、このまわり道っぽさではないだろうか。自由へのヒントは、まわり道にあるのかもしれない。

text: 鈴木収春出版道場伝わる文章学 教授/伝わる動画学 キュレーター)

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