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革命の国が教えてくれたこと

高澤祐平 /地球と遊ぶサバイバル キュレーター

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カリブ海に浮かぶ島々のなかで最大でありながら、現代でも社会主義国家として革命時代の面影を残している国、キューバ。治安の悪いイメージを持たれがちだが、実際は欧米の都市や南米などに比べたらよっぽど安全な国だ。ゲバラ、音楽、クラシックカーなど多くのキーワードに彩られたこの国が旅人の好奇心を刺激しない訳がない。

僕が旅の途中でキューバを訪れたのはヴィム・ヴェンダースがキューバ音楽を題材としたドキュメンタリー『BUENA BISTA SOCIAL CLUB』を作った直後だったので、多少の知識はあるはずだった。

雪景色のトロントから降り立った常夏のハバナの町並みは、他の中南米の国と同様にコロニアルの雰囲気を残した建造物が立ち並び、クラシックカーが街を行交っていた。ただそんな表面的なものはこの国の一部分でしかなく、僕の想像を遥かに越えて他国と異なっていた。

アメリカと国交がない事は知ってはいたが、コーラもなければ、マクドナルドもない、人種差別など微塵も感じられない。それがどういう事なのか、アメリカというものが何なのか、僕は本質的に理解ができていない事に気付いた。まるでパラレルワールドに迷い込んでしまったような感覚だった。

僕はキューバにアメリカとは何かを教えてもらった。大事な物を失って初めてその大きさがわかるように、自分の先入観が覆された時に初めて先入観に捕われていた事に気付く。僕はそれを自由だと感じている。無駄なものが剥げ落ち、自分の輪郭が明確になる程に自由になっていく。そんな感じだ。

サバイバルの講義で「火おこし」を実践している。講義の本題ではないが、自分の輪郭を知るという意味で本質的に同じ事だと思っている。火は人類の進化に不可欠なものだが、普段そんな意識をする事はない。あえて自力で火おこしをすることで初めてわかる事がある。僕は炎というものに人間とは何か?という大きな問いへのヒントが潜んでいる気がしている。

ところで、最近は中国の影響が強くなりキューバも様変わりしてしまった。良い所ばかりではないが、それでも革命の残り香のある魅力に溢れた国だ。機会があれば旅の途中で立ち寄ってみるといい。きっと何かを感じられるはずだ。

 

【text:高澤祐平 /地球と遊ぶサバイバル キュレーター】

高校生の頃から国内をはじめ世界中を放浪。グラフィックデザインやWebなどのデジタル・クリエイティブを中心に、アジアを舞台として活動中。



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