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受け入れることでつながる   フルタヨウコさんの朝ごはん学 part2

フルタヨウコ/朝ごはん学教授

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子どもの頃の体験がいつのまにかすべて今の仕事につながっている、自由大学「朝ごはん学」教授のフルタヨウコさん。その人生のスタンスはまさに「受け入れ上手」とも言えますが、実は「朝ごはん学」の誕生にもその受け入れ上手さが存分に発揮されています。そして実際に始まった「朝ごはん学」での受講生たちの活発な交流とは? 聞き手は、自由大学学長の和泉里佳さんです。

聞き手:和泉里佳(自由大学学長)
司会:高橋宏文(フリユニラジオ編集長)
写真:水澤充


フットワークの軽い「朝ごはん学」

和泉 今、フルタさんは「HOME.」という名前で活動されていますが、その名前の由来とはどういうものなんですか?

フルタ フリーになってからけっこうな期間、屋号がなかったんです。職業も何と書いていいかわからないし、そうすると名刺だけでは説明がつかなくなってくる。それで周りの友だちに「屋号を募集するから、なんかいいのがあったら教えて」とか言っていたんです。そのあと2年くらい経って今のアトリエに引っ越したときに、友だちを呼んでごはん会をしたんです。そうしたらそのなかの、私のホームページをつくってくれた友だちが後日、お手紙をくれたのですが、「フルタさんのアトリエはHOMEのような、みんながふと集まれる拠り所みたいな場所になっていきそうで、すごくワクワクします」ということが書いてあった。それで、「そうか、HOME.っていいな」と思ったんですね。

和泉 今までのお話でも感じたんですが、フルタさんって「受け入れ上手」ですね。

フルタ そうですね、だいたい受け入れますね(笑)。

 

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和泉 受け入れ上手と言えば、自由大学の「朝ごはん学」も最初にキュレーターの岡島さんがこの講義を企画して、どういう人を教授に呼んでくればいいだろう?と彼女なりに考えていたときに、フルタさんがいいんじゃないかということでフルタさんにお話が行ったと思うんですけど、そのときって、最初はどう思いましたか?

フルタ 岡島さんとはもともと飲食系のつながりがあったのですが、そんなに深い話をしたことはなかったんです。でも突然メールが来て、「実は今『朝ごはん学』というものを考えていて、教授になってもらえませんか?」という内容だったんです。「あれ?私が今までの人生で朝ごはんをほとんど抜いたことがないって言ったことあったっけ?ないよね?」と思った。ということは、何か呼ばれているのかな、と思って受け入れました(笑)。

和泉 自分が朝ごはんについての講義を持つ、ということへの抵抗はなかったんですね?

フルタ なぜ私にやってほしいのか、という岡島さんの説明が腑に落ちたし、あとここ数年、自分でも料理教室をやっているなかで、人に何かを伝えることで私のほうがたくさん学ばせてもらっていることを実感していたので、教授や講師を務めることは自分のためになるということはわかっていました。

和泉 なるほど。「朝ごはんを今まで自分の人生でほとんど抜いたことがない」という衝撃の発言が出ましたが、そういう人って珍しいんじゃないですかね?

フルタ 燃費が悪いんですかね(笑)。朝ごはんを抜くと立ちくらみがして、本当に目的地まで着けないというか。反対に、朝ごはんを食べないでお昼ごはんまでもつか不思議です(笑)。

高橋 たとえば前日にちょっと飲み過ぎちゃって、二日酔いのせいで朝ごはんを抜いちゃう人はけっこう多いのかな、というイメージもあるんですが…。

フルタ けっこう飲み過ぎたときでも、だいたいお腹が空いて起きるんですよ…。

和泉 健康的…!「朝ごはん学」は私も1期の初めのほうに講義を聴かせてもらったんですが、朝ごはん学の教授が「朝ごはんを今まで人生でほとんど抜いたことがない」という話をする一方で、「でも実は朝、強くないんです」という話もあって、それがすごく勇気になりました。「あっ、それでいいんだ」というのは、少し光が射した感じもしたし、「ああ、大好きなあのパンがあったから起きよっ」というような、何かを食べるために起きる感じ。きっちりと全部やっているわけではなく、少しユル〜い感じも入っているのが素敵だなと思っていたんです。

高橋 あまり隙がなさすぎると、真似できないというか。

フルタ もしかすると、起きる時間がけっこう遅いというか、あまり早起きしていないから、お腹が空くのかもしれないですね(笑)。

和泉 早起きが得意な人もいるでしょうし、いろんなタイプの人がいればそれぞれ苦手なこともあるだろうけど、苦手なことを無理に直さなくても受け入れながらやればいい、という感じがいいですよね。「朝ごはん学」の受講生というのはどんな感じの人が多いんでしょうか?

フルタ 皆さん、とてもフットワークが軽いですね。実は先日も中央区に住んでいる人が立川のカフェまでジャムを買いに来てくれて、そのついでに立川の美味しいパン屋さんをめぐって帰りたいと言っていた。「中央区から立川までジャムとパンだけを買いに来たんですか?」とビックリしましたが、私がバレンタインデー限定でつくったマロンショコラジャムをどうしても食べたくてわざわざ買いに来てくれたんです。うれしかったですね。

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あと、Facebookで「朝ごはん学」の1〜4期までの受講生が朝ごはんの写真を投稿するグループをつくっているんですが、そこでの情報交換がすごく活発で、しかもそれは美味しいパン屋さんだけじゃなく、「この器が可愛い」とか「この光の入りかたが素敵」とか些細なことも褒めあって、モチベーションが高くていいなと。先日も4期の受講生同士でホテルビュッフェの朝ごはんを食べに行っていて、ずるい!って思いました(笑)。

和泉 いい朝ごはん仲間ができているんですね。

フルタ 誰かの家にご飯を食べに行くぐらい、みんなすごく仲良くなっていますね。本当に学校みたいだなあと。

和泉 そうですよね。


フルタヨウコ
東京生まれ。 工学院大学建築学科在学中、リビングデザイナー・小泉誠氏のもとでアルバイトをし、モノを制作するときの姿勢を学ぶ。大学卒業後、家具の制作販売プロデュース会社のBC工房に入社。展覧会担当として、BC工房とリビングデザインセンターOZONEのディレクター・萩原修氏の企画する展覧会の制作サポーターとして、展示にまつわるあらゆること(展覧会を企画する、キャプションを書く、展覧会の記録写真を撮る、オープニングパーティの料理をつくるなど)を経験する。その経験をベースにフリーとなった2000年より展覧会やイベント、書籍や雑誌、webなどの媒体で文章、写真、料理の仕事を行う。 2003年、「フルタヨウコ」の名で写真、料理の作品作りをはじめる。現在はクラシコムの社員食堂やクラウドカフェの管理人(月、火曜日料理担当)、オリジナルジャム作りなどを行っている。
HOME. twitter:@yoko_home

 
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