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靴磨きが育ててくれた出会いと夢 大木源太さんのMy Way

大木源太/20年履ける靴に育てる 第7期卒業生

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「20年履ける靴に育てる」第7期卒業生の大木源太さん。2012年、大学の春休みを利用して、全国各地を靴磨きしながら旅をしていたそうです。旅から戻った現在も、路上での靴磨きは継続しているとのこと。大木さんに靴磨きの魅力や今後の夢について語っていただきました。

靴磨きが育ててくれた出会いと夢 大木源太さんのMy Way

取材・構成:湯川香奈美
写真:大野祐子


「20年履ける靴に育てる」受講のきっかけ

大木 僕はもともと革靴が好きで、自分のファッションにも積極的に採り入れていました。昨年、偶然手にした本に靴磨きの記事が載っており、気になって調べていたところ、路上での靴磨き職人として活躍されていた長谷川裕也さん(株式会社BOOT BLACK JAPAN代表取締役)、そして、「20年履ける靴に育てる」教授の明石優さんの存在を知り、おふたりの仕事ぶりに感銘を受けました。自由大学には明石さんの講義があるということで、「これは受けてみたい!」と思い受講しました。

講義に参加してみて

大木 まず明石さんの技術に驚きました。明石さんが磨いた靴は、本当に鏡のようにピカピカになります!靴に付いた埃をブラシで落として、クリーナーで磨き、クリームをつける。靴磨きは女性のスキンケアに近いものがありますね。講義では、そうした基本を大切にしながら、道具選び、靴の素材や天候に応じたケアの仕方など、さまざまな知識や技術を習得することができました。また、7期の受講生では、僕が最年少(20歳)でしたが、他にも25〜40歳代と幅広い年齢層の方が集まっていました。これらの人々が「靴磨き」というテーマのもとで集まって作業に没頭したり語り合えるという環境は、ふだんの学生生活では得難い貴重な体験だったと感じています。

靴磨きの旅への挑戦

大木 7期の打ち上げの席で、明石さんに「20歳の頃は何をしていましたか?」と質問したら、「絵を描きながら、自転車で旅をしていた」と言われて、僕も自転車で各地を旅したいなあ…と思うようになりました。そして、せっかくだから学んだ靴磨きもやろうかな…とも。もしお金がなくなっても、靴磨きでご飯代くらいは稼げるのではないかと期待しつつ(笑)。旅は、地元の横浜を出発し、大阪、四国一周、広島、再び大阪を経由し、石川、新潟、福島というルートで廻りました。大阪では、同世代で路上靴磨きをしている人に出会いました。志を持って活動されている姿にとても感動しましたね。その方とは意気投合して、2日間も家に泊めてもらいました。その流れで、旅で初めての路上靴磨きは、その方がいつも拠点としている大阪の天王寺で行ないました。最初のお客さんは、電動車椅子に乗ったおばあちゃんでした。靴磨きをした後も、温かい飲み物の差し入れを持ってきてくれたりと気にかけてくれる優しい方でした。こうした一期一会の出会いもありつつ、この旅で出会ってから今でも交流を持っている人が何人もいます。僕はこの旅から数々の出会いや学びを得ることができました。

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靴磨きはライフワークに

大木 旅から戻ってからも、路上靴磨きは継続しています。よく行く場所は横浜駅、関内駅前ですね。この辺りは外回りのビジネスマンが多くて、とくに中高年層から声をかけられます。珍しさや懐かしさがあるみたいです。日中4時間いても、お客さんは多いときで3、4人。誰も来ない日もあります。それでも路上靴磨きは続けたいと思っています。それはやっぱり、知らない人と「靴磨き」を通して話すことが楽しいから。それに、僕に声をかけてくるお客さんは、もともと自分でもきちんと靴をメンテナンスをしていて、靴への美意識が高い人が多いみたいです。そうした人と会話することで、靴を愛でる気持ちも高まります。

今後、路上以外でやってみたい活動

大木 直近では、同級生はこれから就職活動に突入するので、同級生の靴を磨いてみたいですね。以前、友だちから要望があって磨いたときは、仕上がった靴を見た友だちが喜んでくれたのがうれしかったですね。僕自身は、就職活動をするかは決めかねていますが、20代のうちに、世界各国へ放浪の旅に出たいです。それから、両親の影響もあって、牧場で住み込みで働くのもいいなと思っています。やってみたいことがたくさんありすぎて迷っている状態です(笑)。

大木さんにとって「靴磨き」とは

大木 どんな環境におかれても生きていける自分の「業(わざ)」だな、と思っています。「靴磨き」については、今後さらに技術を磨いていきたいですし、そのうえでもし家や仕事を失ったとしても、路上に立って靴を磨けば、自分の腕一本で自分を食べさせることができると自信がつきました。こうした境地に至ることができたのも、教授の明石さんをはじめ、ともに学んだ受講生のみなさん、旅や路上靴磨きで出会った人たちとの関わりがあったからだと思います。「靴磨き」を通して、自分がどんどん成長しているなと実感しています。


大木源太
1991年、横浜市生まれ、県内の大学に在学中。中高時代は野球に打ち込む一方で、高校の先輩のファッションセンスに惹かれ、おしゃれに開眼する。初めて買った革靴はレッドウィング。憧れの靴はTricker’sのカントリーブーツ(6万円相当)。現在は原宿のツリーハウスカフェで社会勉強(人生修業?)中。好きなタイプはご飯を美味しそうに食べる子。

 



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