ブログ

自由大学の進む道はどっち? 黒崎輝男✕和泉里佳 part2

黒崎輝男/自由大学ファウンダー × 和泉里佳 /自由大学学長

tumblr_inline_mhwswjZV7H1qz4rgp

自由大学で年に一度行なわれる「自由大学祭」、2012年のテーマは「Which Way?信じた道を行け」でした。メッセージ性の強いこのテーマにこめられた思いとは?黒崎さんと和泉さんの対談は、「キュレーション」という言葉を軸にどんどん膨らんでいきます。

黒崎輝男(自由大学ファウンダー)✕和泉里佳(自由大学学長)
司会&対談構成:高橋宏文(フリユニラジオ編集長)

part1 自由大学は常に愚かでありたい
part2 自己増殖的に膨らむ組織体 〜 Which Way? どっちにするの?
part3 学びの場から社会ムーブメントをおこす 〜 もう一歩、動いていくこと


自己増殖的に膨らむ組織体

高橋 自由大学にはいろんな講義がありますが、やはり「キュレーション学」が自由大学の核になっていますよね。あそこからいろんな名物講義が生まれそうな気配を感じたのですが…?

黒崎 それはね、やっぱり里佳さんたちにいろんなアイデアがあったとしても、たとえば声楽家とかああいう突拍子もない人は僕たちのなかにはいないからさ。そういう人たちが来てくれるというのがうれしいじゃないですか。

和泉 そうですね。キュレーターの数だけいろいろな世界が創られますよね。

高橋 自由大学が他とまったく異なるところは、「キュレーション学」のように、「こういう人がいるので教授として呼んできて、こういう講義をやってみたい!」というキュレーターの思いが、面白ければ本当に実現できてしまう。これがそもそもシステム的に他とは違いますよね。

黒崎 そう、自己増殖的に膨らむ組織体になっているんだ。だから、キュレーション学を出たキュレーター候補たちが一緒に組むのもありかもしれないね。たとえば、「インドに学ぶスパイス学」「ハーブ学」「ジンジャー学」なんかを同時に3つぐらいつくってみて、それが「丁寧に食べる学部」とか「スパイスアップ学部」みたいなものになるとか。そういうことをしていけば、2013年はもっともっと面白くなって、それこそ寺子屋みたいになると思う。

Which Way?どっちにするの?

高橋 2012年の自由大学祭のテーマは「Which Way? 信じた道を行け」となっていて、かなりメッセージ性を感じられるものになっていましたよね。

黒崎 そう、ふたつの道があって、難しくて失敗しそうな道と安易に成功しそうな道があったときに、どっちのオプションもある。手堅く行っておいてからちょっと実力をつけて冒険をする、というのもあるかもしれないし、最初から自分を捨てて茨の道に行く人もいると思うんですよ。とりあえず今回、潔くやるのであれば「どっちにするの?」ということ。それはやっぱり女の子のほうが強いと思う。いつもだいたい女性が男性に「どっちにするの?」ってケツを叩いているでしょ?(笑)「あんた、どっちにするの?アタシにするの?向こうに行くの?」って、そうすると男性は追い詰められて、「じゃあ、行くよ」みたいになる(笑)。だからたとえば里佳さんが「自由大学で学びますか?それとも今までどおりですか?」と言えば、「やっぱりこっちで学ばなきゃ」ってなるから、そういうプレイをしてもいいんじゃない?(笑)

tumblr_inline_mhy6jsTFyO1qz4rgp

高橋 実際に、自由大学の講義を通して、受講生たちが何か気づきを得られた瞬間にもたくさん立ち会っていると思いますが…?

和泉 はい。でも、それは自分で気づくものだから。私たちはその環境をつくっているだけ。だから、気づかせてあげているわけでもないし、何かを導いてあげているわけでもなくて、ただジャンプ台を用意している、みたいな(笑)。

黒崎 だから、自分から変わらないとどうしようもないので、思ったよりは時間がかかるよね。

和泉 かかる!

黒崎 やっぱりみんな慎重だからさ、ちょっとずつ「こうかな?」とか思いながらやって、またちょっとずつ変わっていくから。「自由大学に来て、いきなり人生が変わりました」とか言ってくれる人もいるけど、実際にはそれほどでもないよね(笑)。

高橋 でも、自発的に気づきを得ている人たちも少なからずいて、そのうえで2012年の自由大学祭のテーマは「どの道を行くのか?」と、メッセージ性が強かったですよね。

黒崎 確かに強いよね。でも、そこまでいかなくても、ちょっと「どっちなの?」というのがあって、最後にWhich Way You Go!って、道が2つに分かれている。その道はつながっているかもわからない。そこがポイントだと思う。右か左かわからなくて、でも結局は同じだったんだと。だけど、こっちに行って良かったね、というようなノリを僕たちはイメージとして持っている。

和泉 現代に生きていると全て用意されていることが多くて、「自分で決める」ことがちょっと遠い感じがしますよね。だから自分で決めることをどんどん楽しんでいければいいなと思って、そのためにこの「信じた道を行け」というメッセージを入れたいなと思ったんですよね。「みんながそうだから」ということからはもう脱却するときが来ている。だから、まずは自分で考える。そうすれば、「あっ、間違えた!」ってなっても責任は自分にあるから、そのあとでも別になんとかなるじゃないですか。

tumblr_inline_mhy6l44VsK1qz4rgp

黒崎 コンピューターの世界だと「検索から探求へ」と僕は言っているのね。検索すれば何でも得られるけれども、探求というのは好奇心とか自分の意志がないといけないじゃないですか。今の人たちの問題点は、検索しているから何でも並列にいっぱい知っていて、とっ散らかっているわけ。そのなかから何が好きで自分はこうしたいという、もう一歩先に…まあ「キュレーション」とも言えるんだけど…探求していく気持ちが「学ぶ」というものの核になると思うんだけど、自由大学ではそこらへんにも持っていきたい。そのためには、バラバラにいっぱいいろんなものがあるよ、というような状況をつくること。「探求するのはあなたたちであって、僕たちではないから」という姿勢でいきたいなと思うんです。つまり「検索から探求へ」、そして「それらの編集から、もう一歩先のキュレーションへ」ということだと思うんですね。そのへんをわかってもらえると、「そうかそうか」と自分でやることができるようになる。だって今ほど、自分で学ぼうと思えば何でも学べる時代もないわけだし、別に自由大学に来なくても、そこで話している知識自体はネット上で集められるでしょう。それなのになぜ自由大学というリアルな場に来るのか、というのがポイントだと思うんですよ。自分の意見としてそれが話せている、という瞬間が自由大学の醍醐味かなと思うんだ。僕たちはその場をつくりながら、渦巻きをつくっている。当然、働きかたとしてのリスクは大きいわけで、自分の好きなように生きるには、「あんた、どこで稼ぐの?どうするの?」っていう問いかけがあるわけだから、それだったら自分たちで徐々に組織をつくって仕事をつくっていく、というのが「アメーバワークスタイル」であると。2013年は自由大学内でもそれをどんどん充実させていって、そういう状況が出来たところで、僕は里佳さんたちの後ろでほくそ笑むっていう(笑)。


黒崎輝男

自由大学ファウンダー。1949年東京生まれ。「IDEE」創業者としてオリジナル家具の企画販売・国内外のデザイナーのプロデュースを中心に、”生活の探求”をテーマに生活文化を広くビジネスとして展開。東京デザイナーズブロック、Rプロジェクト、スクーリング・パッド、青山でのFarmer’s Marketや246Commonなど、東京の今をつくるプロジェクトをいくつも仕掛けている。

和泉里佳

自由大学学長/キュレーター。自由大学の全体構想をまとめる学長。大学在学中はアメリカンフットボール部のチーフマネージャーとして150人を超えるチーム運営を経験。上海での毎日が大冒険的仕事生活を経て、帰国後自由大学の運営に。人生が大きくシフトチェンジするきっかけを刺激的な学びの場で得たことから、そんな感覚や経験を生かして、ワクワクの学びスイッチがONになる状況を創っている。1979年名古屋生まれ。

part3 学びの場から社会ムーブメントをおこす 〜 もう一歩、動いていくこと

 



関連するブログ