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FREE from FREEDOM

隔週で発行している「自由大学マガジン」の人気のコラム、FREE from FREEDOM!そのバックナンバーをお届けします。


北海道に行ってきた。「#DIY実験室」の教授であり、現在開催中の札幌国際芸術祭で「札幌で暮らすこと」を実践している、暮らしかた冒険家#heymeoto(池田秀紀/伊藤菜衣子)のふたりに会うために。

彼らは高品質低空飛行な暮らしをモットーに、たべものやお金、近所、仕事、インターネットなどを見つめ直し、未来の暮らしを作っている。未来といっても遠い遠い未来の話ではなく、今の生活から地続きにつながった15年後ぐらい先の暮らしのあり方。住まいは築30年ほどの空き家をリノベーションするという。平日は普通に暮らし、金土日の週末に壁紙を剥がしたり、薪を割ったり、暮らしにまつわるワークショップをやりながら作品として開放している。

日曜の12時、玄関のチャイムがなる。「アートはこちらですか?」と。今日は漆喰の壁に作り変えるために、その下準備として壁紙を剥がす日だ。玄関にはいると、壁紙を剥がすヘラが渡される。東京からやってきた建築系の学生たち、#heymeotoの友達とその友達。みんなでワイワイと壁紙を剥がす。すでに勝手がわかっていて脚立持参で訪れる人も。もちろん、どうしたらよいかわからず訪問わずか3分で帰る人もいる。

テレビ取材のクルーが「この家のどのあたりがアートなのですか?」と聞いていたけど、答えを知ったからといってわかるとは限らない。わかる人だけわかればいい、という考えもあるけれど、#heymeotoのふたりは、社会との接続をとても意識している。一見無駄に見えるようなことでも、それは常に最善を求めて動いている結果ということが、一週間一緒に暮らしてわかったことだ。「アーティストとデザイナーの違いは何だ?」という質問に、「デザイナーには依頼者がいる。アーティストにはいない。つくりたいものは、自分で決めるんだ」と答えた人がいたけど、そう考えれば、#heymeotoは立派なアーティストだといえるだろう。

ふたりのやっていることは簡単には真似できないし、真似してもやっぱりそれは真似で終わってしまうのだと思う。ふたりのやっていることを実際にみて、違和感を感じたほうがよい。その違和感はどこからくるのか大元を探り、自分だったらどうするか?と考え始めたら #heysapporo の作品の一部になっているはずだ、あなたも。

※暮らしかた冒険家 札幌の家 hey,sapporo
http://heysapporo.meoto.co/

text: 白井順一手前味噌学 キュレーター)

[自由大学マガジン vol.114 2014/8/6]



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