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FREE from FREEDOM

隔週で発行している「自由大学マガジン」の人気のコラム、FREE from FREEDOM!そのバックナンバーをお届けします。


先日「自分の本をつくる方法」の授業を見学した。みんなが宿題で出した文章を教授の深井次郎さんが印刷して文集にして配布する。文集につけられたタイトルは「人生はだれのもの?」。そこには人生の中で心に残っている一人一人のエピソードが綴られていた。

ある人はドイツへの一人旅のエピソードを文章にした。現地で出会った日本人旅行者から学んだ旅の流儀。体験の深度を深める大切さに気付いた。ある人はお母さんが癌を患っていると聞いたときのことを綴った。その人がお母さんに放った「大丈夫だよ」という言葉。反射的に出た言葉に自分自身が驚いた。またある人は母の死と向き合って見つけたことを文章にした。後悔は自分のためであったと気づいた。

忘れられない経験の中には、自分自身でつかみとった発見がある。そして、その発見に気づいたときの純粋な驚きを人は忘れない。この驚きが自分の価値観となって、新しい自分をつくっていくのだと思う。なぜなら驚きと対になって、そこには感動があるからだ。たとえば、さっきの一人旅のエピソードには、自分に足りないものはこれだったという目から鱗の発見があった。記憶に残る経験には、どこかに自分だけの視点を発見した喜びがあるような気がする。

みんなの文章にはもう一つ、人との関わり合いという共通点があった。自分ではコントロールできない外の世界との触れ合いが、思ってもみない感動をもたらす。心に化学反応を起こすには、自分以外の人の手が必要だ。

人生を変えるほどの大きなことでなくても、他人はいつも自分とは違う価値観をもっている。小さな発見も積み重ねれば、大きな気づきになることもある。日常にある小さな発見にも驚き、感動する、そんな心をもっていたい。

text: 小酒ちひろ(クリエイティブチーム)

[自由大学マガジン vol.115 2014/8/20]



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