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【自由大学マガジン vol.125】文字の成り立ち

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隔週で発行している「自由大学マガジン」の人気のコラム、FREE from FREEDOM!そのバックナンバーをお届けします。


東日本大震災で街全体が壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市雄勝町。かつては日本の硯の 9割を生産していましたが、復興はまだ道半ばにあります。一方で、書道文化の現状を見てみると、学校教育の場でも墨液を使うことが増え、硯で墨をすることはほとんどなくなってしまい、書の本来あるべき姿が失われつつあります。一昨年から始まった雄勝硯復興プロジェクトでは、雄勝硯の復興をきっかけとして、これからの書の文化のあり方を模索しています。

昨年のプロジェクトでは若手デザイナーやアーティストと一緒に既存の枠にとらわれない、たとえば現代の書斎に置いてみたくなるような硯を制作しました。今年は、それらの硯を海外で展示し、書の文化を世界に発信しようとしています。どうやったら海外の人に書の文化を伝えることができるかの試行錯誤です。

硯の道具の意味を理解してもらうには、一緒に書がなくては。書と切っても切り離せないのが文字。特に漢字です。読めない、意味のわからない漢字が書かれた書では、外国人には興味を持ってもらいにくい。外国人に漢字を通じて書に興味を持ってもらうために、絵に近い象形文字から漢字の成り立ちを伝えてみてはどうかということになりました。

漢字の起源は約 3000年前の甲骨文字。現在使われている文字の中でもっとも古い時代に成立した文字です。エジプト古代文字やシュメール文字など、甲骨文字より古い文字はあるけれど、システムが変わらず使い続けているのは漢字だけ。甲骨文字が発見されたのは1899年で、わずか100年少し前なのに、それが解明されているのは、すごいこと。甲骨文字と近い年代に使われていた文字の研究がすでに進んでいたこともあるけれど、漢字が現代でも使われていることが大きいそうです。

象形文字は漢字全体から見れば2割ほどで、割合は大きくないけれど、さらに「上」「下」などの指示文字ができ、それらが元となって複数の漢字が組み合わさって、会意文字や形成文字ができて、何万字という漢字が生まれました。

美文字とか難しい漢字が読めるとか、とかくそういう方向に行きがちな日本人だけど、漢字の成り立ちを知ってる方がかっこいい。そこを踏まえて書を書くところに日本人の美意識がある。異文化の人に自国の文化をどう伝えるかを考えることは、自国の文化を見直すこと。改めてそう感じた年末年始でした。

雄勝硯復興プロジェクト
http://suzuri-ogatsu.jp/

text: 小酒ちひろ(クリエイティブチーム)

[自由大学マガジン vol.125 2015/1/7]



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