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希少価値からの自由

自分の本をつくる方法教授 深井次郎

自由大学マガジンの人気のコラム、FREE from FREEDOM!今回は、自分の方法をつくる方法教授、深井次郎さんの文章です。


「モノが売れなくなった」そんなビジネスマンたちの嘆きを耳にするようになって久しいですが、それは人々が精神的に自由になってきているからではないでしょうか。「みんなが買うから買う、みんなが観るから観る」という価値観で動く人たちを「大衆」といいますが、そういう意味で、大衆が少なくなったのです。

かつて、自分の価値観と値段の間で、人々が混乱していた時代がありました。どんなにお買い得だろうと、希少価値があろうと、みんなが持っていようと、それが自分にとって必要なければ、価値0円です。なぜか、これがわからなかった。

では本当に価値があるものとはなんでしょうか。「自分が生きるために必要なもの」です。たとえば、ぼくらが生きるためには、空気や水は絶対に必要です。なければ死にます。なのに値段は0円に限りなく近い。一方で、アクセサリーには何百万円もするものがあります。でも僕はアクセサリーをしないので、どんなに他人にとって価値があるものでも、1円の価値もありません。

値段の高低は、「必要かどうか」ではなく、「希少価値があるかどうか」で決められています。これが混乱の源です。値段の高いものが価値があるわけではないのです。売る側は、量が少ないもの、手に入れにくいものに価値をつけています。でも、ぼくらにとっては「手に入りにくいか否か」ではなく、「自分に必要かどうか」が問題なのです。「世界で限定10個」だろうが何だろうが、自分が使わないものなら要りません。

「みんなが欲しがってるから」ではなく「自分が生きる上で必要か」を考える。他人が持っているものを全部買うかというと、そんなことはないですね。お酒が飲めない人は、高級ワインが半額セールになってても買いません。Aさんにとって、ライカは70万円の価値があるかもしれませんが、Bさんにとっては7万円の価値かもしれないし、Cさんにとっては写真などiPhoneのカメラで十分なので価値はない。0円だ。これがその人の価値観とか哲学とも言えるもので、この軸がないと生きづらくて仕方ありません。

祖父や親世代、そして僕たち世代も、今まであまりに多くの必要のないものをつくってきました。その代償として、吸える空気がなくなったらどうするのでしょう。飲める水がなくなったらどうするのでしょう。願いも込めて断言しますが、みんな賢くなったのです。広告で煽っても通用しません。もしあなたが広告をする側のビジネスマンであれば、「誠実にオープンにする」ことです。

「人生における無駄で優雅なもの、ぜんぶ」というブルックリンパーラー(新宿のブックカフェ)のコピーが良いのは、無駄であると白状してしまっている誠実さです。さも「あなたに必要」かのように煽る広告ではなく。

「地球にやさしく。環境を守ろう」と車の広告でやってますが全く心に入ってきません。たしか10年ほど前に海外のCMで「私たちの製品は、公害と、騒音と、廃棄物を生み出しています」というコピーがありました。「だからそういう問題をクリアすべく今こんな工夫を重ねています」と続くのですが、ネガティブな面を自覚している会社のほうが、よほど可能性を感じます。

ちょっと脱線してしまいましたが、「人は人、自分は自分」そんな己の軸を持つ人が増えて、自由で豊かな世の中になってきたな、確実に良い時代になっているなと感じるのです。


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タグ: ☞ 深井次郎


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